西人せいじん)” の例文
西人せいじんの永く北斎を崇拝してまざるは全くこれがためにして我邦人のうちややもすれば北斎を卑俗なりとなすものあるもまたこれがためなり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
野獣か、鬼母か、われこれを知らず。西人せいじんあるいは帝胡人こじんの殺すところとなると為す。しからばすなわち帝丘福きゅうふくとがめて、而して福とその死を同じゅうする也。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
序文じよのぶん間々まゝ欧文を直訳したかのやうな語法を交へ、一見して伴天連ばてれんたる西人せいじんの手になつたものだらうと思はれるやうな所があると断り書まで添へたものだ。
しかしこの人を迷庵棭斎とあわせ論ずるのは、少しく西人せいじんのいわゆる髪をつかんで引き寄せた趣がある。屋根屋三右衛門と抽斎との間には、交際がなかったらしい。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
余おもえらく、わがくにの人、学術・品行ともに西人せいじんおくるる、あにただ数里の外のみならんや。いま人をして日夜馳駆ちくせしむるも、なお数十年の後にあらずんば、その地位に達せず。
日曜日之説 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
ある西人せいじんの説に、子女ようやく長じたらば、酒を飲むも演劇を見物するも、初はまず父母とともにして、次第に独歩の自由を許すべしという者あり。この説、はなはだあたるが如し。
経世の学、また講究すべし (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
西人せいじんの名の発音の誤り易きはさる事ながら、ホイツトマン、エマスンなどをあがめ尊ぶ人のわがほとけの名さへアクセントを誤りたるは、無下むげにいやしき心地せらる。つつしまざる可らざるなり。
天来てんらいの奇想のように」、と形容した西人せいじんの句はとうていあてはまるまい。こう思う途端とたんに余の足はとまった。足がとまれば、いやになるまでそこにいる。いられるのは、幸福な人である。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
また彼はゴンスが西人せいじんに対して了解しやすからざる光琳こうりんの芸術を明瞭めいりょうに説明して誤りなからしめし事を賞賛してまざりき。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
且つやてん一豪傑を鉄門関辺の碣石けっせきに生じて、カザン(Kazan)しいされて後の大帝国を治めしむ。これを帖木児チモル(Timur)と為す。西人せいじん所謂いわゆるタメルラン也。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今の西人せいじんがこの句を使ふのも、やはりさう云ふ意味には使つて居らぬ。芸術は長く人生は短しとは、人生は短い故刻苦精励を重ねても、容易に一芸を修める事は出来ぬと云ふ意味である。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
『北斎漫画』のよく滑稽こっけい諷刺に成功して西人せいじんをして仏国漫画の大家ドーミエーを連想せしめたる所以ゆえんここにあり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
西人せいじんは日本と云ふごとに、かならず柔術を想起すと聞けり。