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虫唾
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むしず
ふりがな文庫
“
虫唾
(
むしず
)” の例文
旧字:
蟲唾
若い親方の顔が急に苦々しい、
虫唾
(
むしず
)
の走りそうな恰好に
歪
(
ゆが
)
んだ。同時にその
眥
(
めじり
)
がスーッと切れ上って、云い知れぬ殺気を帯びた悪党
面
(
づら
)
に変った。
山羊髯編輯長
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
いったい、この女と、お角とは、前世どうしたものか、ほとんど先天的の
苦手
(
にがて
)
で、思い出しただけで、おたがいに
虫唾
(
むしず
)
が走るようになっている。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
その遠藤が、いやにのっぺりした
虫唾
(
むしず
)
の走る様な顔を、一層のっぺりさせて、すぐ目の下に寝ているのでした。
屋根裏の散歩者
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
こんな真打のいることも、地味な
唐桟
(
とうざん
)
や
結城
(
ゆうき
)
や黒紋付や、そうしたこしらえの東京の落語家ばかり見慣れてきた今松の目には、
虫唾
(
むしず
)
の走るほどいやだった。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
虫唾
(
むしず
)
が走る、ほほほ、と笑われると、ぐ、ぐ、と我知らず、お時が胸へ
嘔上
(
こみあ
)
げて、あとで黄色い水を吐く……
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
沈毅な二葉亭の重々しい音声と、こうした真剣な話に伴うシンミリした気分とに極めて不調和な
下司
(
げす
)
な女の軽い
上調子
(
うわっちょうし
)
が
虫唾
(
むしず
)
が走るほど
堪
(
たま
)
らなく不愉快だった。
二葉亭余談
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
「わッ、何をしやがるんだ。俺は女が嫌いだよ。ことにお前のようなのは、見ただけでも、
虫唾
(
むしず
)
が走る」
銭形平次捕物控:034 謎の鍵穴
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
不断の白い飯も
虫唾
(
むしず
)
が走るように食いたいが、それよりか
南京虫
(
ナンキンむし
)
のいない
床
(
とこ
)
へ
這入
(
はい
)
りたい。三十分でも好いからぐっすり寝て見たい。その
後
(
あと
)
でなら腹でも切る。……
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
欲にかかるとずうずうしい、人のすきばかりつけねらう仕打ちを見ると、
虫唾
(
むしず
)
が走るほど憎かった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
こいつはいっかな降参しようとしないで、
虫唾
(
むしず
)
が走るほど軍刀をがちゃがちゃ鳴らす癖があった。
地下生活者の手記
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
ただ、作家がその小感動を述べて
得々
(
とくとく
)
としているのを見ると
虫唾
(
むしず
)
が走るのである。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
物と物との間には、どうしても、身も魂も入れ上げて好きになれるものもあれば、
虫唾
(
むしず
)
の走るほど嫌われながら、それでもついて廻らねばならぬ運命もある。
大菩薩峠:28 Oceanの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
虫唾
(
むしず
)
が走るほど
厭悪
(
けんお
)
の情に駆り立てられて、われながらどうしていいかわからない事もあった。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
お召の
袷
(
あわせ
)
、
縮緬
(
ちりめん
)
の下着をチラつかせて、
雪駄
(
せった
)
ちゃらちゃらの、脳天から声が漏れるのを気にするように、ちょいと
月代
(
さかやき
)
を叩いて、——どうです——などと来ると、
虫唾
(
むしず
)
が走りますね
銭形平次捕物控:242 腰抜け彌八
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ずぶ
濡
(
ぬれ
)
の
破褞袍
(
やれぬのこ
)
、
蓋
(
けだ
)
し小児の
尿汁
(
にょうじゅう
)
を洗わずして干したるもの、悪臭鼻を
抉
(
えぐ
)
って
髄
(
ずい
)
に
徹
(
とお
)
る。「やれ情無い、ヘッヘッ。」と
虫唾
(
むしず
)
を吐けば、「や、
膳
(
ぜん
)
の上へ
唾
(
つば
)
を吐くぞ。」と
右手
(
めて
)
なる小屋にて
喚
(
わめ
)
く声せり。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし彼れはその男を見ると
虫唾
(
むしず
)
が走った。それも百姓に珍らしい長い顔の男で、
禿
(
は
)
げ
上
(
あが
)
った額から左の半面にかけて
火傷
(
やけど
)
の跡がてらてらと光り、
下瞼
(
したまぶた
)
が赤くべっかんこをしていた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
お絹という女は
虫唾
(
むしず
)
の走るほどキザな奴だ、噛んで吐き出してやりたいほどイヤな奴だと、お角は腹が煮えくり返ってたまりません。プンプンして弟子たちに当り散らしているところへ
大菩薩峠:19 小名路の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
平次はそう言って、
虫唾
(
むしず
)
の走るような顔をお勝手に戻しました。
銭形平次捕物控:081 受難の通人
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「冗談どころではない、わしは敵討という話を聞くと
虫唾
(
むしず
)
が走るほどいやだ、誰が
流行
(
はや
)
らせたか、あんなことを流行らせたおかげに、いいかげん馬鹿な人間が、また馬鹿になってしまった」
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
虫
常用漢字
小1
部首:⾍
6画
唾
常用漢字
中学
部首:⼝
11画
“虫”で始まる語句
虫
虫干
虫酸
虫眼鏡
虫蝕
虫螻
虫喰
虫取菫
虫籠
虫気