蘆垣あしがき)” の例文
かたわらなる苫屋の背戸に、緑を染めた青菜の畠、結いめぐらした蘆垣あしがきも、船も、岩も、ただなだらかな面平おもたいらに、空に躍った刎釣瓶はねつるべも、もやを放れぬ黒いいとすじ
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一言ひとこと……今一言の言葉の関を、えれば先は妹背山いもせやま蘆垣あしがきの間近き人を恋いめてより、昼は終日ひねもす夜は終夜よもすがら、唯その人の面影おもかげ而已のみ常に眼前めさきにちらついて、きぬたに映る軒の月の
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
蘆垣あしがき隈所くまどちて吾妹子わぎもこそでもしほほにきしぞはゆ 〔巻二十・四三五七〕 防人
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
蘆垣あしがきのところへ近づいておいでになると、これまでとは変わり
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)
蘆垣あしがきなか似児草にこぐさ莞爾にこよかわれましてひとらゆな 〔巻十一・二七六二〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
浜へく町から、横に折れて、背戸口せどぐちを流れる小川の方へ引廻ひきまわした蘆垣あしがきかげから、松林の幹と幹とのなかへ、えりから肩のあたり、くっきりとした耳許みみもと際立きわだって、帯もすそも見えないのが
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はなすくなけれど、よし蘆垣あしがき垣間見かいまみとがむるもののなきがうれし。
松翠深く蒼浪遥けき逗子より (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)