臥薪嘗胆がしんしょうたん)” の例文
よく人のいう臥薪嘗胆がしんしょうたんとか、一念没頭とかそんな程度の懸命は、彼にとっては、特別な心がけでなく、日々当然にしている生活だった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
諸国民とも戦時と同じ程度の臥薪嘗胆がしんしょうたんを必要とするであろうから、戦時中の組織はおそらく戦争の終結とともに直ちに全くくずれてしまって
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
いずくんぞ知らん。この間にあって道庵先生は臥薪嘗胆がしんしょうたんの思いをして、復讐の苦心をしていたのであります。
その昔、南朝の遺臣、足助次郎重範の一族が、段々山麓さんろくから山づたいに逃れ、此処ここに落ちのびて臥薪嘗胆がしんしょうたん、樵夫や百姓に身をやつして生活の基礎を築いたのが起源とされている。
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
その当時は日露にちろの関係も日米の関係もあらしの前のような暗い徴候を現わし出して、国人全体は一種の圧迫を感じ出していた。臥薪嘗胆がしんしょうたんというような合い言葉がしきりと言論界には説かれていた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
十年臥薪嘗胆がしんしょうたんをしていた姉妹たちでした。
「父の仇、曹操をくさぬうちは」と、馬超はあれ以来、蒙古族の部落にふかくかくれて、臥薪嘗胆がしんしょうたん、今日の再興に励んできたのであった。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ドイツには植民地が無い、植民地の無いのは手足が無くて胴だけの人間と同じ事だ、国民は一致協力して軍備を充実し、生産を増加する為に、臥薪嘗胆がしんしょうたんをしなければならぬ。
で私も、何とかして、印可をうけたいものと、臥薪嘗胆がしんしょうたんの苦行をしのんでいるうち、故郷くにもとの母が死去したので、功を半ばに帰国しました
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
臥薪嘗胆がしんしょうたんして、含月荘の怪殿に入りこみ、女の指をあつめる奇怪な国家老のあることを見届け、さらに、怪女性玉枝の仮面までをぎかけて
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
賛之丞がもッと手強てごわい相手だったら、当然、おれは躍起となる。うんと腕をみがきにかかる。文字どおりの臥薪嘗胆がしんしょうたんをやる。
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
という風評に、四十余年の臥薪嘗胆がしんしょうたんむくわるる時節は来れりと、一大決戦を覚悟しているとのことだし、義元はまた義元で
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
聞けば、赤穂浪人の軽輩の中には、亡君の無念を胆に銘じ、吉良殿のしるしを申しうけんと、臥薪嘗胆がしんしょうたんしている者もあるそうな。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たとえいかなる臥薪嘗胆がしんしょうたんの苦難をしのぶとも、八幡大菩薩、産土うぶすなの神も照覧あれ、臣等の一命に代えても、かならず官兵衛様の身を救い出してみせる
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれらは、明らかに、臥薪嘗胆がしんしょうたんしている。祖父義家が、かつて、公卿たちからめさせられた生涯の屈辱をわすれていない。要するに、地底ちていりゅうだ。
自分たちの臥薪嘗胆がしんしょうたんしている戦いの苦しみを、ひとしく敵もしているものと、おたがい、もののふ同士の立場を思いやって、むしろ一種の同情すら抱いた。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当時天子は御涙をのんで、いとしき御女おんむすめの君をもって、胡族えびすの主にめあわせたまい、一時の和親を保って臥薪嘗胆がしんしょうたん、その間に弓馬をみがいたという例もあります。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
臥薪嘗胆がしんしょうたんの文字どおりに、伊那丸いなまると一とうが、ここ一年に、生命をしてきずきあげた小太郎山こたろうざん孤城こじょう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このうえはなにとぞ、もとの甲山こうざんにお帰りあそばして、あわれ、甲斐源氏再興かいげんじさいこうのために、臥薪嘗胆がしんしょうたんいたしている若君わかぎみをはじめ、われわれどもの盟主めいしゅとおなりくださいますよう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いずれにせよ、累年るいねん、忠義のみちを取って、臥薪嘗胆がしんしょうたん、かくまで奮戦してきた者どもを捨てて、なおどうあっても、敵へ御降伏に出られるものなら、もはやぜひもないことです。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なおちそんじたら取ッんで、きゃつの喉首のどくびめあげても、この馬糧小屋まぐさごやのそとへかれをだしては、きょうまでの臥薪嘗胆がしんしょうたんは水のあわではないか——と思いこんでいる鞍馬くらまの竹童。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「幼少生死にさまよい、二十年を配所にひそみ、臥薪嘗胆がしんしょうたん、ようやくここに至った覇業を、彼一人のため、私情にみだし、禍根を長くのこしてなろうや。主体を保たん為には、手脚もつ」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(さすがは、やはり名門の子である。二十年の臥薪嘗胆がしんしょうたん、よくぞした)
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)