膝掛ひざかけ)” の例文
素鼠縮緬すねずみちりめん頭巾被づきんかぶれる婦人は樺色無地かばいろむじ絹臘虎きぬらつこ膝掛ひざかけ推除おしのけて、めよ、返せともだゆるを、なほ聴かで曳々えいえいき行くうしろより
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
余の膝掛ひざかけ洋傘ようがさとは余が汽車から振り落されたとき居士が拾ってしまった。洋傘は拾われても雨が降らねばいらぬ。
京に着ける夕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
冷々ひやひやとした侘住居わびずまいである。木綿縞もめんじま膝掛ひざかけを払って、筒袖のどんつくを着た膝をすわり直って、それから挨拶した。
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
赤帽が縦側の左の腰掛の真ん中へ革包を置いて、荒い格子縞の駱駝らくだ膝掛ひざかけそばいた。洋服の男は外へ出た。大村が横側のうしろに腰掛けたので、純一も並んで腰を掛けた。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
お島は二階の六畳で疲れた体を膝掛ひざかけのうえによこたえている男の傍に坐って、他人行儀のような口を利いていたが、興奮の去ったあとの彼女は、長く男の傍にもいられなかった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お種はセル地の膝掛ひざかけを夫に掛けてやって、その側で動揺する車の響を聞いた。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さい手提てさげの荷にはならず、持って貰うほどでもないのを無理に受取って、膝掛ひざかけといっしょに先へ行った、きざみ足のうしろ姿を見たときに——これはと思った。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そこらにある物をき集めて、国から持って出た革包に入れようとしたが、余り大きくて不便なように思われたので、風炉敷に包んだ。それから東京に出る時買って来た、駱駝らくだ膝掛ひざかけを出した。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
膝掛ひざかけ引抱ひんだいて、せめてそれにでもあたたまりたそうな車夫は、値がきまってこれから乗ろうとする酔客よっぱらいが、ちょっと一服で、提灯ちょうちんの灯で吸うのを待つ、氷のごとく堅くなって、催促がましく脚と脚を
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
光沢つやのある髪で湿しめっぽくし付けられていた空気が、弾力でふくれ上がると、枕の位置が畳の上でちょっと廻った。同時に駱駝らくだ膝掛ひざかけり落ちながら、裏を返して半分はんぶに折れる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しま膝掛ひざかけはこせて
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
甲野さんは駱駝らくだ膝掛ひざかけを腰から下へ掛けて、空気枕の上で黒い頭をぶくつかせていたが
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うしろから主人が来た。主人のひげは十月の日に照らされて七分がた白くなりかけた。形装なりも尋常ではない。腰にキルトというものを着けている。くるま膝掛ひざかけのようにあらしまの織物である。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は男のあとを見え隠れにここまでいて来て、また見たくもない唐物屋の店先に飾ってある新柄しんがら襟飾ネクタイだの、絹帽シルクハットだの、かわじま膝掛ひざかけだのをのぞき込みながら、こう遠慮をするようでは
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)