緋葉もみじ)” の例文
しばらくすると、このひでりに水はれたが、碧緑へきりょくの葉の深く繁れる中なる、緋葉もみじの滝と云うのに対して、紫玉は蓮池はすいけみぎわ歩行あるいていた。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
少時しばらくすると、此のひでりに水はれたが、碧緑へきりょくの葉の深く繁れる中なる、緋葉もみじの滝と云ふのに対して、紫玉は蓮池はすいけみぎわ歩行あるいて居た。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
が、松と緋葉もみじの中なれば、さすらう渠等かれらも恵まれて、足許あしもとの影はこまよこたえ、もすそ蹴出けだしは霧に乗って、つい狩衣かりぎぬの風情があった。
霜に緋葉もみじの散る道を、さわやかに故郷から引返ひっかえして、再び上京したのでありますが、福井までには及びません、私の故郷からはそれから七里さきの
雪霊記事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大悪相を顕じたのである。従って女の口をるる点々の血も、彼処かしこ手洗水みたらしく水脈に響いて、緋葉もみじをそそぐ滝であった。
象徴かたどったものだ。緋葉もみじもなお濃い。……不思議なもののような気がする。ただの白い饅頭では断じてない。はてな。
かまちの障子を、膝をついて開けると、板に置いた、つつみものを手に引きつけて、居直る時、心いたさまに前褄が浅く揺れて、帯の模様の緋葉もみじが散った。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
氷月と云う汁粉屋の裏垣根に近づいた時、……秋は七草で待遇もてなしたろう、枯尾花に白い風が立って、雪が一捲ひとまき頭巾を吹きなぐると、紋の名入の緋葉もみじがちらちらと空に舞った。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
話にききとれていたせいではあるまい、お米の顔は緋葉もみじの蔭にほんのりしていた。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其処へ、ちらちらと真紅まっか緋葉もみじも散れば、色をかさねて、松杉の影がします。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
天井へ宙乗ちゅうのりでもするように、ふらふらふらふら、山から山を経歴へめぐって……ええちょうど昨年の今月、日は、もっと末へ寄っておりましたが——この緋葉もみじ真最中まっさいちゅう、草も雲もにじのような彩色の中を
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お嬢さんは手を引込ひっこめた。枯野の霧の緋葉もみじほど、三崎街道の人の目をひいたろう。色ある半帕も、安んじて袖のふりへ納った。が、うっかりした。その頬をぬぐった濡手拭は、火鉢の縁にかかっている。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
辻町糸七の外套がいとうの袖から半間はんまつらを出した昼間の提灯は、松風にさっと誘われて、いま二葉三葉散りかかる、折からの緋葉もみじともれず、ぽかぽかと暖い磴の小草こぐさの日だまりに、あだ白けて、のびれば欠伸あくび
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのたびに、崖の緋葉もみじがちらちらと映りました、夢のようだ。
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蝉はひとりでジジと笑って、緋葉もみじの影へ飜然ひらりと飛移った。
縷紅新草 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)