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竹椽
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ちくえん
要なき
胸は
痛めけん、
愚かしさよと
一人笑みして、
竹椽のはしに
足を
休めぬ、
晩風凉しく
袂に
通ひて、
空に
飛かふ
蝙蝠のかげ二つ三つ、
夫すら
漸く
見えず
成ゆく
櫨楓なんどの色々に染めなしたる
木立の
中に、柴垣結ひめぐらしたる
草庵あり。丸木の柱に木賊もて
檐となし。
竹椽清らかに、
筧の水も音澄みて、いかさま
由緒ある獣の
棲居と覚し。
稚兒が
母よぶ
樣に
差まねぎつ、
坐敷にも
入らではるかに
待てば、
松野は
徐ろに
歩みを
進めて、
早く
竹椽のもとに
一揖するを、
糸子かるく
受けて
莞爾に、
花莚の
半を
分けつゝ
團扇を
取つて
風を
送れば