突掛つッか)” の例文
わたくしは素足に穿き馴れぬ古下駄を突掛つッかけているので、物につまずいたり、人に足を踏まれたりして、怪我をしないように気をつけながら
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
が、思切って、と寄った、膝を膝に突掛つッかけて、肩に手を懸けるとうっかりした処を不意に抱起されて、呆れるのを、じっと瞶め
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
權「これか、是は殿様が槍を突掛つッかけてで受けるか何うだと云うから、受けなくってというので、掌で受けたゞ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
丁度ちょうどそのときにわはいってたのは、いましもまちあさって猶太人ジウのモイセイカ、ぼうかぶらず、跣足はだしあさ上靴うわぐつ突掛つッかけたまま、にはほどこしちいさいふくろげて。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
こうなると自分も何とか片をつけなくっちゃならないから、一番あとから下駄を突掛つッかけて、長蔵さんと赤毛布あかげっと草鞋わらじひもを結ぶのを、不景気な懐手ふところでをして待っていた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お帰りなさるのを、かまちまで見送った時、私何だか気になってね、行って見ましょうよッて、下駄を突掛つッかけて出ようとすると
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
女がの吹いたように白粉おしろいを付けて、黒い足へ紺天こんてんの亜米利加の怪しい鼻緒のすがったのを突掛つッかけて何処から出て来るんだかいね、唐縮緬とうちりめん蹴出けだしをしめて、何うしても緋縮緬と見えない
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
(ぶらつく体をステッキ突掛つッかくるさま、疲切ったる樵夫きこりのごとし。しばらくして、叫ぶ)畜生、ざまを見やがれ。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
巡礼「突飛ばされた時に石へ膝を突掛つッかけましたので」
ろく手拭てぬぐいも絞らないで、ふらんねるをひっかけたなり、帽子もかぶらずに、下駄を突掛つッかけて出たんだがね。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
小鍋立こなべだてというと洒落に見えるが、何、無精たらしい雇婆やといばあさんの突掛つッかけの膳で、安ものの中皿に、ねぎ菎蒻こんにゃくばかりが、うずたかく、狩野派末法の山水を見せると、かたわらに竹の皮の突張つッぱった
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其処そこへ、突掛つッかけに 紺がすりの汗ばんだ道中どうちゅうを持ってくと
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
えいこらと立って、土間の足半あしなか突掛つッかけた。
栃の実 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
頸摺うなじずれに、突着け、突掛つッか
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)