おだ)” の例文
新字:
非常に寒くはあつたが、その日は晴れておだやかな日和ひよりだつた。長い朝の間ずつと書齋に坐つたきりじつとしてゐるのに私は飽きた。
御米およねなほした。宗助そうすけ途方とはうれて、發作ほつさをさまるのをおだやかにつてゐた。さうして、ゆつくり御米およね説明せつめいいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さうしてあたらしいとはいひながら、やはらかでおだやかなよい氣持きもちをやぶらないで、上品じようひんさをちながらうたはれてあるのが、このうたなどのよいところです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
思ひの外おだやかな死顏です。六十一といふにしては、ひどく頽然たいぜんとしてゐますが、これが半生金儲けに熱中して、石原の鬼と言はれた人間の死顏とも思はれません。
艶黒つやぐろおだしき雄牛うなじ垂り日の夕かげは曳かれけるかも
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
發言者は進み出て欄干らんかんにもたれた。彼は、一言々々を明瞭に、おだやかに、確固たる調子で、しかし大聲ではなく續けて云つた——
其時そのとき宗助そうすけ何時いつもの調子てうしで、むしおだやかに、おとうとこといてゐたが、いてしまつたあとでも、べつこれといふ眼立めだつた批評ひひやうくはへなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おだしきゑまひなるかも片頬照り爐に寄る母の何か言ひつる
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
さすがにおだやかな氣持では居られなかつたのです。
半天はんてんは澄んで雲もなかつた。今は西に變つた風に追はれて流れる雲は長い銀色の柱状ちゆうじやうをなして東の空から長々と動き出してゐた。月がおだやかに照る。
今夜こんやすこあつたかいやうだね。おだやかで御正月おしやうぐわつだ」とつた。めしまして烟草たばこを一ぽんだんになつて、突然とつぜん
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)