ごく)” の例文
先生は単なるごくつぶしだと思ったりしがちだから、そうならないように、彼はいろいろと用事をしたり、また好かれるようにしたりした。
その姿が怠け者と見え、腑がいなく思えるのであろう、何かで激語になると「この、ごくつぶしめ」とぼくを呶鳴りつけたりした。
「こうして、一日している以上は、一日食う権利があるんだぜ、大口をあいて、この世のごくを食いつぶしても恥かしくねえ」
「ブラ/\遊んでをるごくつぶしめア、今にあん通りになるんぢや」と私にこはい凝視を投げて甲走かんばしつた声で言つた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
つまり僧が生産者ではなく「ごく潰し」だという意味だろう、貧しい人たちの怒りのこもった言葉のようだが、栄二はいまそのとおりだと思うのであった。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
あなたは、それだけじゃ三上さんよりも、まだだめな、役に立たないごくつぶしよ! わかって。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
ごくつぶしが減ってせいせいしたなんて……あんまりだと思うと、ついわしも肚が立って怒鳴りつけてしまうし、この頃は、家にいるとくさくさするので、山さばかり来ていますて
凍雲 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
ごくつぶし奴、何処に出てうせた。何だつてくたばつて来なかつたんだ、是れ」
お末の死 (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
ねらつて爪をいだ旗本の殿樣なんかごくつぶし見たいなものだが——
「ばか野郎‼ どこをウロついてるんだい、このごくつぶし‼」
雪の夜 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
世の中にも一匹のごくつぶしが存在しなくなるという効能になるんだが、どうも、その場に至ってみると手が承知しねえんでね、この手が……
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「麦飯に山の薯を、汁かけ飯にしてたべる。あれが好きでの……余りたべて連れあいの筑阿弥ちくあみどのにごくつぶしよと、いたく怒られたことがある」
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いだ旗本の殿様なんかごくつぶしみたいなものだが——
実社会にとって用のない、ごくつぶしの集まりだ、堂塔がからすの巣にならないように、番人をしているだけの者に過ぎない
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは賛成だね、国中へごくつぶしを一人も置かねえということになると、みんなの励みにならあ。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
戦乱が生んだ餓鬼道がきどうちまたでは、癈人、ごくつぶし、足手まとい以外の何者ともられなかったといってよい。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ええ、でかくばかりあってこの世のごくつぶしみたようなものでございます」
「どうだ猿。われのようなごくつぶしは、世間様でも飼ってはくれまい。親のありがたさがわかったか」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時の大臣おとどであろうが、親王、摂家せっけの高貴であろうが、片ッぱしから、ごくつぶしの、無能呼ばわりして、まるでそこらの凡下ぼんげ共より劣る馬鹿者視して、罵りやまないことだった。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ごくつぶしという名称は、穀物の極端にたっとばれている時勢にあって、最大な侮辱であった。
(新字新仮名) / 吉川英治(著)
ごくつぶしめ。貴様たちは日頃、なんのためにろくを喰っているか」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「配所のごくつぶし」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)