やれ)” の例文
さばれやれがねならぬ祇園精舍の鐘を聞くものは、待人戀ひしともおもひ、寂滅爲樂とも感ずべけれど、其聲の美に感ずるは一なり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ばおすゝぎなさるがよいと言れてよろこ會釋ゑしやくしてやれし垣根の切戸きりどけ廣くも非ぬ庭へ進むに老人背後うしろ見返みかへりておみつ水を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
マリバスが笑つたり、泣いたりすると、やれヸオロンの三筋の絲を弓でくやうなうなりが聞える。
サバトの門立 (旧字旧仮名) / ルイ・ベルトラン(著)
書院のやれ障子が開いて、立ち出でたのは、兄弟の母でなくて、父の山岡市郎右衛門であった。
剣の四君子:04 高橋泥舟 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うたなるかな。ふるのきにおとづれた。なにすわつてても、苗屋なへやかさえるのだが、そこは凡夫ぼんぷだ、おしろいといたばかりで、やれすだれごしのりだしてたのであるが、つゞいて
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
蒸しあつく、ここにやれ馬車
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
詞成堂——台町の山の屋敷の庭続き崖下にあるやれ借家……矢野も二三度遊びに行ったね、あの塾の、小部屋小部屋に割居して、世間ものの活字にはまだ一度も文選されない、雑誌の半面
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やれむしろ籍きたる上に
浅草哀歌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
りんと言ふと、畚を取つて身構へた。向へる壁のすすやれめも、はや、ほの明るく映さるゝそのたゞ中へ、たもとを払つてパツと投げた。は一面に白く光つた、古畳ふるだたみの目はひとびとつ針を植ゑたやうである。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)