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真向
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まむき
ふりがな文庫
“
真向
(
まむき
)” の例文
旧字:
眞向
悄然
(
しょうぜん
)
として
項垂
(
うなだ
)
れていた小野さんは、この時居ずまいを
正
(
ただ
)
した。顔を上げて宗近君を
真向
(
まむき
)
に見る。
眸
(
ひとみ
)
は例になく
確乎
(
しっか
)
と坐っていた。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「百夜はおろか、二百夜、千夜、出離の
御功力
(
みくりき
)
をたまわるまでは、振り向いてはならぬ。まだ
真向
(
まむき
)
にこの
御扉
(
みとびら
)
のうちへこそ向え」
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は
竟
(
つひ
)
に堪へかねたる
気色
(
けしき
)
にて障子を
推啓
(
おしあく
)
れば、
涼
(
すずし
)
き空に懸れる
片割月
(
かたわれづき
)
は
真向
(
まむき
)
に彼の
面
(
おもて
)
に照りて、彼の愁ふる
眼
(
まなこ
)
は又
痛
(
したた
)
かにその光を望めり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
臘
(
らふ
)
に
白粉
(
おしろい
)
した、
殆
(
ほとん
)
ど
血
(
ち
)
の
色
(
いろ
)
のない
顔
(
かほ
)
を
真向
(
まむき
)
に、ぱつちりとした
二重瞼
(
ふたへまぶた
)
の
黒目勝
(
くろめがち
)
なのを
一杯
(
いつぱい
)
に
睜
(
みひら
)
いて、
瞬
(
またゝき
)
もしないまで。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「ああ、それは私の
為事
(
しごと
)
の一つでしたわねえ。貴方に
吩付
(
いひつ
)
けられた。」女は居住まひを直して男の
真向
(
まむき
)
になつた。
計画
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
▼ もっと見る
石田は花壇の前に棒のように立って、しゃべる女の方へ
真向
(
まむき
)
に向いて、黙って聞いている。顔にはおりおり微笑の影が、風の無い日に
木葉
(
このは
)
が揺らぐように動く外には、何の表情もない。
鶏
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「ええ、あれはあのままですと、どうもこちらの
三枝
(
さいぐさ
)
さんのお家へあまり
真向
(
まむき
)
になるので……」不二男さんはいかにも何んでもなさそうに説明した。「ちょっと斜めに道をつけてみましたが……」
朴の咲く頃
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
庭を向いた眼は、ちらりと
真向
(
まむき
)
に返る。金縁の
眼鏡
(
めがね
)
と薄黒い
口髭
(
くちひげ
)
がすぐ
眸
(
ひとみ
)
に
映
(
うつ
)
る。相手は依然として過去の人ではない。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
爾時
(
そのとき
)
、これから参ろうとする、
前途
(
ゆくて
)
の石段の真下の処へ、
殆
(
ほとん
)
ど路の幅一杯に、両側から
押被
(
おっかぶ
)
さった
雑樹
(
ぞうき
)
の中から、
真向
(
まむき
)
にぬっと、
大
(
おおき
)
な馬の顔がむくむくと
湧
(
わ
)
いて出た。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私はその時やっとKの眼を
真向
(
まむき
)
に見る事ができたのです。Kは私より
背
(
せい
)
の高い男でしたから、私は勢い彼の顔を見上げるようにしなければなりません。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
解
(
と
)
き余る
鬢
(
びん
)
の
堆
(
うずたか
)
い中に、端然として
真向
(
まむき
)
の、
瞬
(
またた
)
きもしない鋭い顔は、
正
(
まさ
)
しく薬屋の
主婦
(
あるじ
)
である。
処方秘箋
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
先刻
(
さっき
)
から気をつけるともなしにこの様子に気をつけていた二人は、自分達の視線が彼の視線に行き合った時、ぴたりと
真向
(
まむき
)
になって互に顔を見合せた。小林は心持前へ乗り出した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
女の
容貌
(
ようぼう
)
は始めから大したものではなかった。
真向
(
まむき
)
に見るとそれほどでもないが、横から眺めた鼻つきは誰の目にも少し低過ぎた。その代り色が白くて、
晴々
(
はればれ
)
しい心持のする
眸
(
ひとみ
)
を
有
(
も
)
っていた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
啣
(
くわ
)
えた巻煙草に火を移して顔を
真向
(
まむき
)
に起した時、稲妻はすでに消えていた。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
オイッケンは精神生活と云う事を
真向
(
まむき
)
に主張する学者である。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
真
常用漢字
小3
部首:⽬
10画
向
常用漢字
小3
部首:⼝
6画
“真向”で始まる語句
真向浴
真向額
真向梨割