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眞價
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しんか
一
體中根は
平素は
決して
成績佳良の
方ではなかつた。
己も
度度嚴しい
小言を
云つた。が、
人間の
眞面目は
危急の
際に
初めて
分る。
己は
中根の
眞價を
見誤つてゐた。
『
貴君も
隨分口が
惡いね』とか
何とか
義母が
言つて
呉れると、
益々惡口雜言の
眞價を
發揮するのだけれども、
自分のは
合憎く
甘い
言をトン/\
拍子で
言ひ
合ふやうな
對手でないから
而して
斯の
如く偶然の機會よりして偶然の殺戮を見得るが故に、一
見して
淺薄にして
原因もなきものゝ
種なる、この
書の
眞價は
實に
右に
述べたる
魔力の
所業を
妙寫したるに
於て存するのみ。