白楊はこやなぎ)” の例文
この樺の林へ来るまえに、自分は猟犬を曳いて、さる高く茂ッた白楊はこやなぎの林を過ぎたが、この樹は——白揚は——ぜんたい虫がすかぬ。
あいびき (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
身を躍らせて山を韋駄天いだてんばしりに駈け下りみちみち何百本もの材木をかっさらい川岸のかしもみ白楊はこやなぎの大木を根こそぎ抜き取り押し流し
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
前岸むこうぎしはもとのままの湖の縁でとびとびに生えた白楊はこやなぎが黒く立っていて、その白楊の下の暗い処からそこここに燈の光が見えている。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
薄い白楊はこやなぎの板を曲げて拵らえた箱だの、白樺の皮で編んだかごだの、その他貧富の別なくロシア人が日常つかうさまざまな道具の山であった。
池のまはりには、一面にあしがまが茂つてゐる。そのあしがまの向うには、せいの高い白楊はこやなぎ並木なみきが、ひんよく風にそよいでゐる。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
南佐久みなみさくの村々の間をはじめの一時間ばかりは何事もなく千曲川に沿ってゆくだけだが、そのうち川辺の風景が少しずつ変ってきて、白楊はこやなぎかばの木など多くなり
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
めいは横になったまま、もの思いにふけり、月がのぼり、その光が格子こうしの前の白楊はこやなぎの葉のうえにふるえているのを見つめていた。城の時計がちょうど真夜中を告げた。
鼠色の白楊はこやなぎよ、罪ありさうにふるへてゐる、全體ぜんたいどんな打明話うちあけばなしが、その蒼白あをじろい葉の上に書いてあつたのだらう、どういふ思出を恐れてゐるのだ、秋の小逕こみちに棄てられた熱に惱んだ少女子をとめごよ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
はた、辻の真昼まひるどき、白楊はこやなぎにほひわななき
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かはぞひの白楊はこやなぎ、またひこばえて
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
白楊はこやなぎの林に豹が隠れ
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
一方、園のいちばんはずれには、他の樹木とは不釣合いに背の高い白楊はこやなぎが四五本、そのさやさやと揺らめくおのおのの梢に大きな鴉の巣をのせている。
右の耳朶みみたぶから頬にかけてぴしゃっと平手が命中した。私は泥のなかに両手をついた。とっさのうちに百姓の片脚をがぶと噛んだ。脚は固かった。路傍の白楊はこやなぎくいであった。
逆行 (新字新仮名) / 太宰治(著)
その路縁みちぶちにも、そこここに白楊はこやなぎが立ち、水の中へかけてあし嫩葉わかばが湖風にかすかな音を立てていた。白楊の影になった月の光のさない処に一つ二つ小さな光が見えた。それはほたるであった。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
空と艸木くさきとのうつつた池の水面が、ほとんどうまる位な蛙だから、賛成の声も勿論もちろん大したものである。丁度ちやうどその時、白楊はこやなぎの根元に眠つてゐたへびは、このやかましいころろ、かららの声で眼をさました。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かかるなりき、白楊はこやなぎ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
ありや、紀念かたみ白楊はこやなぎ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
別れは、小野の白楊はこやなぎ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
かかる夜なりき、白楊はこやなぎ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
ありや、記念かたみ白楊はこやなぎ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)