白布しらぬの)” の例文
さてくれなんとするにいたれば、みな水面すゐめんにおちいりてながれくだる、そのさま白布しらぬのをながすがごとし。其蝶のかたち燈蛾ひとりむしほどにて白蝶しろきてふ也。
白布しらぬの汗止あせどめ、キッチリとうしろにむすび、思いきってはかまを高くひっからげた姿すがた——群集ぐんしゅうのむかえる眼にもすずしかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふたりの男は、箱の中の白布しらぬのの、両はしをもって、一、二、三で、パッとはねのけようと、身がまえしています。
超人ニコラ (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
宿直の姿が二階を放れて、段に沈むと、すらすらと三方へ、三条みすじ白布しらぬのを引いて立ち別れた。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
戸の内はくりやにて、右手めての低き窻に、真白ましろに洗ひたる麻布を懸けたり。左手ゆんでには粗末に積上げたる煉瓦のかまどあり。正面の一室の戸は半ば開きたるが、内には白布しらぬのを掩へる臥床ふしどあり。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
……籠手こてすね当てのかずを調べ、野郎どもに渡して置け。……くさりかたびらも大切だ、千切れた所はつづるがいい……たすきの白布しらぬのあたま鉢金はちがね、さあさあ人数だけこしらえろ……
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その上に白布しらぬのをいっぱいにかぶせてあるていを、馬上にいたお雪ちゃんが、最もめざとく見て、そうして、はて、これは急病人ではない、もう縡切こときれている人だ、お気の毒な、急病の途中
大菩薩峠:30 畜生谷の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
さゝらがた錦を張るも、荒妙あらたへ白布しらぬの敷くも
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
白布しらぬのかけしはたの前
都喜姫 (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
きょうを雪辱せつじょくの日となす気が——白布しらぬのにつつまれた眉に見える。りんとなって、白い炎をたてているように見える。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戸の内はくりやにて、右手めての低き窓に、真白ましろに洗いたる麻布あさぬのをかけたり。左手ゆんでには粗末に積み上げたる煉瓦れんがかまどあり。正面の一室の戸は半ば開きたるが、内には白布しらぬのをおおえる臥床ふしどあり。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
蒼白い月の光の中に、白布しらぬのが柱のように宙へ延び、それがユラユラと歩いて来る後から、姑獲鳥うぶめのように子を抱いた女と、竹の杖をついた盲目の男と、猩々しょうじょうとが歩いて来るからであった。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さゝらがた錦を張るも、荒妙あらたへ白布しらぬの敷くも
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
駕籠のうちは、事変の直後、一番使者として江戸を立った早水はやみ藤左衛門と萱野かやの三平が、駕籠の天井から晒布さらし吊手つりてを下げてすがり、頭には白鉢巻、腹にも白布しらぬのを巻いて、乗っていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この人は今着きし汽車にて、ドレスデンより来にければ、茶店ちゃみせのさまの、かしことこことことなるに目を注ぎぬ。大理石の円卓まるづくえ幾つかあるに、白布しらぬの掛けたるは、夕餉ゆうげ畢りしあとをまだ片附けざるならむ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「わたしは一本の白布しらぬのとなって、お城の中へはいって行くのさ」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)