男衆おとこしゅう)” の例文
井戸端に水をんでいる女衆おんなしゅうや、畑から帰って来る男衆おとこしゅうは、良平があえぎ喘ぎ走るのを見ては、「おいどうしたね?」などと声をかけた。
トロッコ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
と、おとなたちも気がついて、振返えると、また二、三寸板戸の開きがひろげられて、そこへ、他の男衆おとこしゅうを供につれた銀之助が来たのだった。
暖簾のれんしたにうずくまって、まげ刷毛先はけさきを、ちょいとゆびおさえたまま、ぺこりとあたまをさげたのは、女房にょうぼうのおこのではなくて、男衆おとこしゅうしん七だった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
青年の男子だけは別として、男も少年のうちは主婦に用を言いつけられる。また主人が男衆おとこしゅうに命令をするにも、常に細君からの注文はれられる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いや味な事は言わないかわり、お客になって飲み食いもした事がない。以前はどこかの箱屋はこやだともいうし役者の男衆おとこしゅうだったといううわさもある。君江はこの男から日比谷の占者のことをきいたのである。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
人目ひとめけるために、わざと蓙巻ござまきふかれた医者駕籠いしゃかごせて、男衆おとこしゅう弟子でし二人ふたりだけが付添つきそったまま、菊之丞きくのじょう不随ふずいからだは、その午近ひるちかくに、石町こくちょう住居すまいはこばれてった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
やみなかを、ねずみのようになって、まっしぐらにけて堺屋さかいや男衆おとこしゅうしん七は、これもおこのとおなじように、柳原やなぎはら土手どてを八つじはらへといそいだが、夢中むちゅうになってはしつづけてきたせいであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)