爲事しごと)” の例文
新字:為事
「何うです、君の方の爲事しごとは隨分氣がつまるでせうね?」つて言つたら、「いや、貴方だから打明けて言ひますが、實に下らないもんです。」
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
それに毎日の自分の爲事しごとの上から云つてもおちついて机に向ふ事が出來るし、我等の爲事に附きものである郵便の都合もたいへんによかつた。
樹木とその葉:04 木槿の花 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
博士は狹いところが嫌で、内ぢゆうで一番廣い部屋に住んで、そこで爲事しごともする。着更もする。客をもそこへ通すのである。
半日 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
とうていかような爲事しごと出來できますまいから、この大工事だいこうじ遺物いぶつたゞけでも、當時とうじ社會状態しやかいじようたいさつすることが出來できます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
「ああ、それは私の爲事しごとの一つでしたわねえ。貴方に吩付いひつけられた。」女は居住まひを直して男の眞向まむきになつた。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
これは容易よういならぬ爲事しごとであるが、しかしながらたん困難こんなんであるだけであつてけつして不可能ふかのうではない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
杉の樹の檢分と云ふやうな爲事しごとはちつとも面白くなく、退屈し切つたが、その時、澤のきれいな水のほとりで喫した中食の事をば、いまでも朦朧と囘想することが出來る。
すかんぽ (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
そのくものあたりへあがつて雲雀ひばりこゑがついて、そして、いまかうしてゐることのほかに、なんの爲事しごとわづらはしさもこゝろがかりもない、ゆたかな氣持きもちをかんじてゐることを
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
机上の爲事しごとつかれた時、世間のいざこざのわづらはしさに耐へきれなくなつた時、私はよく用もないのに草鞋を穿いて見る。
そのほかなんでも理科りか學問がくもん應用おうようした爲事しごとかんする品物しなものを、それ/″\その發達はつたつ順序じゆんじよおうじてならべてあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
自分の爲事しごとを人の前に言へぬといふ事は、私には憤懣と、それよりも多くの羞恥の念とを與へた。
硝子窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
側には小僧が、大い𥳽でさつ/\とあふつてゐるのである。それでも婆あさんは爲事しごとをしてゐると、自ら信じてゐるのであらう。主人はをかしく思ふであらうに、小言も言はぬと見える。
半日 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ですから當時とうじにおいてすで協同一致きようどういつちして爲事しごとをするひとつの團體だんたい社會しやかいといふものが出來できてをり、またそれを支配しはいしてかしら、すなはち酋長しゆうちようのようなものがなくては
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
さうして直ぐ毎月自分の出してゐる歌の雜誌の編輯、他の二三雜誌の新年號への原稿書き、溜りに溜つてゐる數種新聞投書歌の選評、さうした爲事しごとにとりかゝらねばならなかつた。
どんなつらい爲事しごとをしたつて、體を痛めるやうなことはあるまいと存じます。
高瀬舟 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
『莫迦な事を言ふなあ! 社を休んだのは少し用があつて休んだんだよ。實は四、五日休んで一つ爲事しごとしようかと思つたんだよ。それが出來なかつたから、ぶら/\夕方から出懸けて行つたまでさ。』
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
爲事しごとはかどり、いつもより早目に私は酒の燗をつけた。朝爲事のあとで一杯飮むのも永い間の習慣である。嘗める樣にしてゐてもいつかうつとりと醉つて來る。其處へ姉妹揃つてやつて來た。
たべものの木 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
どこかで爲事しごとに取り附きたいと思つて、爲事を尋ねて歩きまして、それが見附かり次第、骨を惜まずに働きました。そして貰つた錢は、いつも右から左へ人手に渡さなくてはなりませなんだ。
高瀬舟 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
餘りに急變した自分自身の歌の姿に驚いた私は、一首を書いてはやめ、二首を清書しては考へ込み、一向に爲事しごとはかどらぬその間にまた行李を解いて萬葉集を取り出してぼつ/\と讀み始めた。
樹木とその葉:07 野蒜の花 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)