熊蜂くまばち)” の例文
二百発の砲弾は、まるでいたずら小僧こぞうむれを襲う熊蜂くまばちの群のように、敵艦にとびついていったが、まことにふしぎな、そして奇怪な光景であった。
寄宿舎から、その春、入寮したばかりの若い生徒たちは、一群れの熊蜂くまばちのように、うなりながら、巣離れていった。めいめいの野薔薇のばらを目ざして……
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
陽気な陽気な時節ではあるがちょっとの間はしーんと静になって、庭のすみ柘榴ざくろまわりに大きな熊蜂くまばちがぶーんと羽音はおとをさせているのが耳に立った。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
すさまじいむしうなりやがつてかへしたひだり熊蜂くまばちが七ツ八ツ、ばたきをするのがある、あしふるふのがある、なかにはつかんだゆびまた這出はひだしてるのがあツた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ますます不思議に不思議を重ねて、しきりに樹のきれるを待ちおりしに、やがて倒れたるを急ぎ見れば、欅のうしろに縞蛇しまへびの腹部より切断したると、熊蜂くまばちの大いなる巣とありたり。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
船長は、たたき落とされた熊蜂くまばちの巣みたいに、かっとなっておこった!
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
熊蜂くまばちのうなり飛び去る棒のごと
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
しきりやぶまへにある枇杷びは古木ふるき熊蜂くまばち可恐おそろしおほきをかけた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)