“潮(てう)” の例文
青(あを)ざめた女(をんな)の瞼(まぶた)も決意(けつい)に紅(くれなゐ)に潮(てう)しつゝ、「戸(と)を開(あ)けないで支度(したく)をしませう。」地震(ぢしん)以來(いらい)、解(と)いた事(こと)のない帶(おび)だから、ぐいと引(ひき)しめるだけで事(こと)は足(た)りる。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
天(てん)未(いまだ)に闇(くら)し。東方(とうはう)臥龍山(ぐわりうざん)の巓(いたゞき)少(すこ)しく白(しら)みて、旭日(きよくじつ)一帶(いつたい)の紅(こう)を潮(てう)せり。昧爽(まいさう)氣(き)清(きよ)く、神(しん)澄(す)みて、街衢(がいく)縱横(じうわう)の地平線(ちへいせん)、皆(みな)眼眸(がんぼう)の裡(うち)にあり。然(しか)して國主(こくしゆ)が掌中(しやうちう)の民(たみ)十萬(じふまん)、今(いま)はた何(なに)をなしつゝあるか。
鉄槌の音 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)