氣質かたぎ)” の例文
新字:気質
それは兎も角、わが八五郎までが、金貸しばかり荒したといふ、義賊氣質かたぎの泥棒に同情して、フラリと戻つて來たのでせう。
外記 命が惜いと申したら、むかし氣質かたぎの叔父樣は、ひとかたならぬ御立腹であつたが、家の爲や親類縁者のために、命を捨てろといふのは無理な註文。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
子に向つて父親の讒訴ざんそをいふ女房氣質かたぎを誰れが教へた、お力が鬼なら手前は魔王、商賣人のだましは知れて居れど、妻たる身の不貞腐れをいふて濟むと思ふか
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
またそなな昔氣質かたぎを離れて、今風に、損得一方からだけ云つたとて、東京に居ることが何で得なもんか。博士になる云うたからとて博士なんぞは當節箒で掃くほどある。
生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
盛り場の女などが奴風やつこふうをするやうになり、奴氣質かたぎを賣りものにしたが、それはきやんで、パリ/\とした、いい氣つぷ、ものに拘はらない、金に轉ばないといふたてまへで江戸藝者など
凡愚姐御考 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
物に間違ひのない商人氣質かたぎで、どんな忙しい時でも、これだけのプロローグがなければ、用事をきり出せなかつたのでせう。
へてれとらさぬ用心ようじんむかし氣質かたぎいつこくを立通たてとほさする遠慮ゑんりよ心痛しんつうおいたはしやみぎひだり御苦勞ごくらうばかりならばおよめさまなり舅御しうとごなり御孝行ごかうかう御遠慮ごゑんりよらぬはず
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その腹を分けた姉妹、おなじ胤とはいひながら、姉は母の血をうけて公家氣質かたぎ、妹は父の血をひいて職人氣質、子の心がちがへば親の愛も違うて、母は姉贔屓びいき、父は妹贔屓。
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
廣田利右衞門は公儀御時計師には相違ないにしても、逢つて見ると職人氣質かたぎのまことに氣持の良い老人でした。年の頃六十二三にもなるでせうか。
馬鹿野郎ばかやらうよばはりは太吉たきちをかこつけにれへのあてこすり、むかつて父親てゝおや讒訴ざんそをいふ女房にようぼう氣質かたぎれがおしへた、おりきをになら手前てまへ魔王まわう商買人しようばいにんのだましはれてれど
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
父さまが鎌倉においでなされたら、わたし等もうはあるまいものを、名聞みやうもんを好まれぬ職人氣質かたぎとて、この伊豆の山家に隱れずみ、親につれて子供までもひなにそだち、詮事せうこと無しに今の身の上ぢや。
修禅寺物語 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
人形師を嫌つて、商人になつた子には、名人氣質かたぎの東洲齋が、大した親しみを持たず、そのため、立ち入つた話をしなかつたといふのもうなづけます。
一つは彫物職人氣質かたぎとでも申しませうか、私は何にも彫らずには居られなかつたので御座います
雜穀屋と言ふのは表向きの商賣、裏へ廻るとこの邊一帶の地主で、小豆あづきや小麥の一升賣をしなくとも宜いわけですが、隱居忠左衞門は昔氣質かたぎで、なか/\この商賣を止させなかつたわけです。
氣質かたぎで、容赦ようしやがありません。