トップ
>
毛繻子
>
けじゅす
ふりがな文庫
“
毛繻子
(
けじゅす
)” の例文
黒い
毛繻子
(
けじゅす
)
のカーテンを、サッと開きますと、明るい光線がパッとさしこんで来たので、百合子は頭がくらくらしたので両眼を閉じました。
赤耀館事件の真相
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
見すぼらしい
服装
(
なり
)
をして、ズックの革鞄と
毛繻子
(
けじゅす
)
の
蝙蝠傘
(
こうもり
)
を提げてるからだろう。田舎者の癖に人を
見括
(
みくび
)
ったな。一番茶代をやって
驚
(
おどろ
)
かしてやろう。
坊っちゃん
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
古い
洋傘
(
こうもり
)
の
毛繻子
(
けじゅす
)
の今は炬燵掛と化けたのを叩いて、隠居は
掻口説
(
かきくど
)
いた。この人の老後の楽みは、
三世相
(
さんぜそう
)
に基づいて、隣近所の農夫等が吉凶を
卜
(
うらな
)
うことであった。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ぶらりぶらりとした身の中に、もだもだする心を抱きながら、
毛繻子
(
けじゅす
)
の
大洋傘
(
おおこうもり
)
に色の
褪
(
あ
)
せた制服、丈夫
一点張
(
いってんば
)
りのボックスの靴という
扮装
(
いでたち
)
で、五里七里歩く日もあれば
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
白味のかったセルの単衣に
毛繻子
(
けじゅす
)
に藤紫と紅のいりまじった友禅をうちあわせた帯をしめている、ほっそりした身体つきが、お光には卑しい身分でないことを知らしめた。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
▼ もっと見る
園は静かに茶を
啜
(
すす
)
り終った。星野の手紙をおぬいさんの方に押しやった。古ぼけた黒い
毛繻子
(
けじゅす
)
の風呂敷に包んだ書物を取り上げた。もう何んにもすることはなかった。座を立った。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
あの雨じみのある鼠色の壁によりかかって、結び髪の女が、すりきれた
毛繻子
(
けじゅす
)
の帯の間に手を入れながら、うつむいてバケツの水を見ている姿を想像したら、やはり小説めいた感じがした。
水の三日
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その群れの中に
詰襟
(
つめえり
)
の背広を着て、古い
麦稈
(
むぎわら
)
帽子をかむって、一人てくてくと
塀
(
へい
)
ぎわに寄って歩いて行く男があった。靴は
埃
(
ほこり
)
にまみれて白く、
毛繻子
(
けじゅす
)
の
蝙蝠傘
(
こうもりがさ
)
はさめて
羊羮色
(
ようかんいろ
)
になっていた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
置時計、寒暖計、
硯
(
すずり
)
、筆、
唾壺
(
だこ
)
、汚物入れの
丼鉢
(
どんぶりばち
)
、
呼鈴
(
よびりん
)
、まごの手、ハンケチ、その中に目立ちたる
毛繻子
(
けじゅす
)
のはでなる毛蒲団一枚、これは軍艦に居る友達から贈られたのである。(六月七日)
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
わざ/\お神さんにとのことに小女も不審を立て、寝るまでの時間つなぎに、亭主が不断着の裾直しに懸って居た秋元の女房は、黒の
太利
(
ふとり
)
とかいう
袢纒
(
はんてん
)
の、袖口の
毛繻子
(
けじゅす
)
に
褐色
(
ちゃ
)
の霞が来て居るのを
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
ゴロツクは
脅迫
(
きょうはく
)
の意味そうな。
乳呑子
(
ちのみご
)
連れた
女
(
メノコ
)
が来て居ると云うので、二人と入れ代りに来てもらう。眼に
凄味
(
すごみ
)
があるばかり、
例
(
れい
)
の
刺青
(
いれずみ
)
もして居らず、
毛繻子
(
けじゅす
)
の
襟
(
えり
)
がかゝった
滝縞
(
たきじま
)
の
綿入
(
わたいれ
)
なぞ着て居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
彼はその人の差していた
洋傘
(
こうもり
)
が、重そうな
毛繻子
(
けじゅす
)
であった事にまで気が付いていた。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
奥様から頂いた
華美
(
はで
)
な
縞
(
しま
)
の着古しに
毛繻子
(
けじゅす
)
の
襟
(
えり
)
を掛けて、
半纏
(
はんてん
)
には
襟垢
(
えりあか
)
の附くのを気にし、帯は撫廻し、豆腐買に出るにも小風呂敷を
被
(
か
)
けねば物恥しく、酢の
罎
(
びん
)
は袖に隠し、
酸漿
(
ほおずき
)
鳴して
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
仕方なしに黙って二人の間に置かれた
烟草盆
(
タバコぼん
)
を眺めていた。彼の頭のなかには、重たそうに
毛繻子
(
けじゅす
)
の
洋傘
(
こうもり
)
をさして、異様の瞳を彼の上に据えたその老人の面影がありありと浮かんだ。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
毛
常用漢字
小2
部首:⽑
4画
繻
漢検1級
部首:⽷
20画
子
常用漢字
小1
部首:⼦
3画
“毛繻子”で始まる語句
毛繻子張