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正雄
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まさを
つとめある
身なれば
正雄は
日毎に
訪ふ
事もならで、
三日おき、
二日おきの
夜な/\
車を
柳のもとに
乘りすてぬ、
雪子は
喜んで
迎へる
時あり、
泣いて
辭す
時あり
稚兒のやうになりて
正雄の
膝を
枕にして
寐る
時あり、
誰が
給仕にても
箸をば
取らずと
我儘をいへれど、
正雄に
叱られて
同じ
膳の
上に
粥の
湯をすゝる
事もあり、
癒つて
呉れるか。
女子どもは
何時しか
枕元をはづして
四邊には
父と
母と
正雄のあるばかり、
今いふ
事は
解るとも
解らぬとも
覺えねども
兄樣兄樣と
小き
聲に
呼べば、
何か
用かと
氷嚢を
片寄せて
傍近く
寄るに