歌舞伎座かぶきざ)” の例文
また時々は夫人に芝居しばい見物をすすめて、『歌舞伎座かぶきざ団十郎だんじゅうろう、たいそう面白いと新聞申します。あなた是非に参る、と、話のお土産』
小半を始めいつも来るべきはずの芸者はいずれも歌舞伎座かぶきざに土地の芸者のさらいがあるとやらで九時近くまで一人も姿を見せず
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
この芝居を見てから数日後に友だちといっしょに飯を食いながらこの歌舞伎座かぶきざ見物の話をして、どうもどの芝居もみんな
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そこを出て、ぶらぶら歌舞伎座かぶきざの前まで行って、絵看板を見て、さて、それからまた新富町の研究所へ引返した。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
猿廻さるまわしに来た。此は呂昇のがらにも無いし、連れ弾もまずいし、大隈おおすみを聞いた耳には、無論物足らぬ。と思いつゝ、十数年前の歌舞伎座かぶきざが不図眼の前に浮んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
するとちょうどその日は庸三も、田舎で世話になった葉子の母親に、歌舞伎座かぶきざを見せることになっていて、無論葉子も同行するはずで、三枚切符を買ってあった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ぼくのおかあさんはね、むかし芝居しばいきなんだよ。だけど歌舞伎座かぶきざなんて、たかいだろう。それに、いくひまもないのさ。ぼくいもうとのために、さかさえめったにられなかったのだものね。
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
「それでもこの間歌舞伎座かぶきざの立見につれていってやったら、ちょうどしげの子別れのところだったが、眼を赤くして涙を流して黙って泣いていた。あれで人情を感じるには感じるんだろう」
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
エヽわつし歌舞伎座かぶきざ武田屋たけだやかねてえもんでがすが、ねえさんにしかられるんで、おめえのやうに茶屋ちやや消炭けしずみをしてながら、さう世辞せじくツちやアやうがねえから、世辞屋せじやさんへでもつて
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
父母とともに行く歌舞伎座かぶきざや新富座の緋毛氈ひもうせんの美しい棧敷さじきとは打って変って薄暗い鉄格子てつごうしの中から人の頭を越してのぞいたケレンだくさんの小芝居の舞台は子供の目にはかえって不思議に面白かった。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
余は朝っぱらから歌舞伎座かぶきざのぞいた気で宿を出る。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
余談ではあるが、二十年ほど前にアメリカの役者が来て、たしか歌舞伎座かぶきざであったかと思うが、「リップ・ヴァン・ウィンクル」の芝居をした事がある。
化け物の進化 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
きょうは、稽古けいこは休みだ。きのうは道場で、夜の十一時半まで稽古があった。めまいがして、舞台にぶったおれそうになった。歌舞伎座かぶきざ、十月一日初日。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
土地会社へ勤めていた重吉もこれまでにない賞与金をもらったくらいで、丁度歌舞伎座かぶきざあらた建直たてなおされた時、重吉は種子の衣類に身を飾ったお千代を連れて見物に行く。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
たとえば歌舞伎座かぶきざの正面二階から舞台を見るような場合、視像の深さはほとんどなくなっているはずであるが、われわれは俳優の運動によって心理的に舞台の空間を認識する。
映画芸術 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
三人と歌舞伎座かぶきざへ行った帰り、シールのコートからそろいの大島の羽織と小袖こそでから長襦袢ながじゅばんまで通してたもとの先を切られたのが始まりで、その次には真珠入しんじゅい本鼈甲ほんべっこうのさしぐしをどこで抜かれたのか
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
資本主義の帝劇ていげき歌舞伎座かぶきざのいばった切符嬢とはたいした相違でうれしかった。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「いいえ。歌舞伎座かぶきざの裏の方へ越しました。あなたは何処どこ。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
二月の歌舞伎座かぶきざを家族連れで見物した。三日前に座席をとったのであるが、二階の二等席はもうだいたい売り切れていて、右のほうのいちばんはしっこにやっと三人分だけ空席が残っていた。
自由画稿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
本日は弟と歌舞伎座かぶきざに行く事になっていた。
亮の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)