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楫棒
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かじぼう
ふりがな文庫
“
楫棒
(
かじぼう
)” の例文
車夫は五六歩行き過ぎてから、大廻しに
楫棒
(
かじぼう
)
を店の前へ
下
(
おろ
)
した。さすがに慎太郎にもなつかしい、分厚な
硝子戸
(
ガラスど
)
の立った店の前へ。
お律と子等と
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
こんな処へ御同行は、見た事、聞いた事もない、と呆れた、がまた
吃驚
(
びっくり
)
。三つ目の俥の
楫棒
(
かじぼう
)
を上げた、幌に覗かれた島田の白い顔が……
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お百姓衆の
鍬
(
くわ
)
や
鎌
(
かま
)
の
柄
(
え
)
になったり、空気タイヤの人力車の
楫棒
(
かじぼう
)
になったり、さま/″\の目に遭うてさま/″\の事をして居る。失礼ながら君の心棒も、俺の先代が身のなる果だと君は知らないか。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
すると墓地裏の八幡坂の下に箱車を引いた男が一人、
楫棒
(
かじぼう
)
に手をかけて休んでいた。箱車はちょっと眺めた所、肉屋の車に近いものだった。
年末の一日
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
五合
(
ごんつく
)
ふるまわれたお
庇
(
かげ
)
にゃ、名も覚えりゃ、人情ですよ。こけ勘はお里が知れまさ、ト
楫棒
(
かじぼう
)
へ
掴
(
つかま
)
った形、腰をふらふらさせながら前のめりに
背後
(
うしろ
)
から
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
息杖で
背後
(
うしろ
)
へ反っくり返るのと、
楫棒
(
かじぼう
)
を握って前のめりに
屈
(
かが
)
むんじゃ、から、見た処から役割が違いやさ。
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
人通りも
疎
(
まばら
)
な往来には、ちょうど今一台の
人力車
(
じんりきしゃ
)
が、大通りをこちらへ切れようとしている。——その
楫棒
(
かじぼう
)
の先へ立つが早いか、彼は両手を挙げないばかりに、車上の青年へ声をかけた。
お律と子等と
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
楫棒
(
かじぼう
)
に掛けて地に置いた
巳之屋
(
みのや
)
と書いた看板は、新しい光を立てて、
蝋紙
(
ろうがみ
)
を
透
(
すか
)
す骨も一ツ一ツ
綺麗
(
きれい
)
である。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
見ると実際さっきの車は、雨を待っている
葉柳
(
はやなぎ
)
が暗く条を垂らした下に、金紋のついた後をこちらへ向けて、車夫は
蹴込
(
けこ
)
みの前に腰をかけているらしく、悠々と
楫棒
(
かじぼう
)
を下ろしているのです。
妖婆
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
蛇目傘
(
じゃのめ
)
を泥に
引傾
(
ひっかた
)
げ、
楫棒
(
かじぼう
)
を
圧
(
おさ
)
えぬばかり、
泥除
(
どろよけ
)
に
縋
(
すが
)
って
小造
(
こづくり
)
な女が
仰向
(
あおむ
)
けに
母衣
(
ほろ
)
を
覗
(
のぞ
)
く顔の色白々と
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
支那人は
楫棒
(
かじぼう
)
を握ったまま、高い二階を見上げましたが、「あすこですか? あすこには、何とかいう印度人の婆さんが住んでいます」と、気味悪そうに返事をすると、
匆々
(
そうそう
)
行きそうにするのです。
アグニの神
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お京の姿を、框に覗くと、帰る、と見た、おしゃまの、お先走りのお茶っぴいが、木戸
傍
(
わき
)
で待った俥の
楫棒
(
かじぼう
)
を自分で上げて右左へ振りながら駆込んで来たのである。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
母衣
(
ほろ
)
をきりきりと巻き下ろして、
楫棒
(
かじぼう
)
を上げる内に、お夏さんは乗りながら、
袂
(
たもと
)
から白いものを出した。ヤ、最中を棄てるのかと思うと、そうじゃなかったんで、
手巾
(
ハンケチ
)
でげす。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
車夫は呼交わしてそのまま
曳出
(
ひきだ
)
す。米は前へ駆抜けて、
初音
(
はつね
)
はこの時にこそ聞えたれ。
横着
(
よこづけ
)
にした、
楫棒
(
かじぼう
)
を越えて、前なるがまず下りると、石滝
界隈
(
かいわい
)
へ珍しい
白芙蓉
(
はくふよう
)
の花一輪。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
車は病院所在地の横田の方から、この田畝を越して、城の裏通りを走ったが、
突
(
つっ
)
かけ若竹座へは行くのでなく、やがて西草深へ
挽込
(
ひきこ
)
んで、
楫棒
(
かじぼう
)
は島山の門の、例の石橋の際に着く。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とひらりと乗る途端に
楫棒
(
かじぼう
)
を取った、
腕車
(
くるま
)
の上から
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と、
車夫
(
しやふ
)
は
楫棒
(
かじぼう
)
に
張
(
は
)
つた
肩
(
かた
)
を
聳
(
そび
)
やかした。
続銀鼎
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
楫
漢検1級
部首:⽊
13画
棒
常用漢字
小6
部首:⽊
12画
“楫”で始まる語句
楫
楫取
楫子
楫取魚彦
楫主
楫枕
楫柄
楫屋
楫棹
楫音