木片もくへん)” の例文
「お前達はよく互にしつかりと抱き合つてゐる。」と、まるで巨大な木片もくへんが生命を持つてゐて私の云ふことが聞えるかのやうに私は云つた。
しかたきゞ缺乏けつばふから自然しぜんにかういふすななか洪水こうずゐもたらした木片もくへんうづまつてるのをつてこれもとめてるのだといふことはかれはじめてはじめてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
木片もくへん井桁いげたにくみあわせたいかだのよなものであった。そのうえになにが入っているのかはこがのっている。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「行こうじゃないか。見に行こうじゃないか。どんなだろう。きっと古い木だね。」私は冬によくやる木片もくへんを焼いて髪毛かみのけこするとごみを吸い取ることを考えながら云いました。
鳥をとるやなぎ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「そんぢやおめえさんもうものにや不自由ふじいうなしでえゝな」ばあさんはうらやましさうにいつた。さうしてちひさな木片もくへんいれためもつあさきたなふくろ草刈籠くさかりかごからした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その秘術というは、なんでも木片もくへんをナイフでけずって、小楊子こようじみたいなものを造り、それを叩いて「動け!」というと、その木屑が、ちあがってヒョックリ、ヒョックリ躍り出す。
人造物語 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さら開墾かいこんだい一の要件えうけんである道具だうぐいま完全くわんぜんして自分じぶんげられてある。かれういふ辛苦しんくをしてまでも些少させう木片もくへんもとめて人々ひとびとまへほこりかんじた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
木片もくへんであった。犬がすぐそばでえつづけた。玉太郎は完全に正気にかえった。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)