有為転変ういてんぺん)” の例文
旧字:有爲轉變
この噴水が永遠不滅の霊魂であって、その周囲の有為転変ういてんぺんにはいささかも気をとめずに絶えず歌っているもののように思われるのであった。
禅は仏教の有為転変ういてんぺんの説と精神が物質を支配すべきであるというその要求によって家をば身を入れるただ仮りの宿と認めた。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
「……有為転変ういてんぺんの世の中やと、互に見合わす顔と顔。さらば/\おさらばの、声も涙に掻き曇り、別れてこそはいでて行く」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
若い女性の身そらで、あんな乱世の中心、有為転変ういてんぺんのるつぼへ、何で好んで飛びこんで行こうとなさるか。友松には気が知れん。わしは反対だ。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
句意は世の中の有為転変ういてんぺんなるは桜花の少しの間に咲き満ちたると同じとなり。誰にもく分る句にてしかも理想を含みたれば世人には賞翫しょうがんせらるるものと覚えたり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
そうおそれることはない。なみにさらわれる者はおぼれるが、浪に乗る者はこれを越えることができる。この有為転変ういてんぺんをのり超えて不壊不動ふえふどうの境地に到ることもできぬではない。
悟浄出世 (新字新仮名) / 中島敦(著)
拙者は身世しんせい数奇さっきというやつで、有為転変ういてんぺんの行路を極めたが、天下の大勢というものにはトンと暗い、京都はどうなっている、江戸はどうだ、それから、君の故郷の薩摩や
有為転変ういてんぺんの世の中。きのうまでは江戸一の捕物の名人。将軍の御前で捕物御前試合の勝名のりをうけたほどの身が、きょうは丸腰にされて揚屋あがりやの板敷の上。変ればかわる姿である。
顎十郎捕物帳:16 菊香水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
興行方面の有為転変ういてんぺんの激しさを示すべく、今ここに同書の六区の記事を掲げてみよう。
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
多少の蒐集癖を持っていた従兄はこの部屋の壁にも二三枚の油画あぶらえ水彩画すいさいがをかかげていた。僕はぼんやりそれらのを見比べ、今更のように有為転変ういてんぺんなどと云う昔の言葉を思い出していた。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
世の中は藤原氏や菅原氏の栄枯盛衰の外にも、いろ/\な有為転変ういてんぺんがあった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
派手にも暮らし、さびしくも住み、有為転変ういてんぺんの世をすごすこと四十余年、兄弟とも、子とも申さず、唯血族一統の中に、一人、海軍の中将を出したのを、一生の思出おもいでに、出離隠遁しゅつりいんとんの身となんぬ。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
万一の事を考えると今の内に有為転変ういてんぺんの理、生者必滅しょうじゃひつめつの道を説き聞かして、もしもの変が起った時取り乱さないくらいの覚悟をさせるのも、おっとつまに対する義務ではあるまいかと考え出した。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むかしおとこありけるという好男子に由縁ゆかりありはらの業平文治なりひらぶんじがお話はいざ言問わんまでもなくひなにも知られ都鳥の其の名に高く隅田川すみだがわ月雪花つきゆきはなつに遊ぶ圓朝えんちょうぬしが人情かしら有為転変ういてんぺんの世のさま
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
中原ちゅうげんへ中原へと、古来から多くの武門が侵入して来ては没落し、あらゆる有為転変ういてんぺんを、いつも被治者の立場から長い眼で見て来たため、自然養われて来たものかと思われる。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところで、この道誉もですが、正月は一度近江へ帰国し、またすぐのぼりますが、しばしはこれへ伺えぬかもしれませぬ。とまれ世は有為転変ういてんぺん蛟龍こうりゅうふちに潜む時もありとか。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
政治だの、戦だの、そんな有為転変ういてんぺんを超えて、社会よりも、高いところにあるのが僧だ、叡山えいざんだ。——平家が悩む時には、平家も救ってやろう、源氏が苦しむ時には源氏もなぐさめてやろう。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「さても、有為転変ういてんぺん。おかしな姿をお互いに見たものですな」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戦国の世の中ほど、有為転変ういてんぺんのはやいものはない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)