暗闇くらがり)” の例文
おし入の暗闇くらがりで赤色とう現像皿げんぞうさらをかざしてみながら、いかにわたし歡喜くわんきの笑みをかべたことであらうか?それからけふまでもう二十
私はその声をきくといくらか気持よく感じながら、人通りのぱったりと途絶えた暗闇くらがりを今までよりもなお急ぎ足に走った。
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
白粉花おしろいばな夜中よなかに表をたゝくから、雨戸あまどを明けてふと見れば、墓場の上の狐火きつねびか、暗闇くらがりのなかにおまへの眼が光る。噫、おしろい、おしろい、よごれたよる白粉花おしろいばな
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
厭世えんせい的なお気持ちにもなられたのであろう、人がその秘密を悟らずにいるとは思われない、暗闇くらがりに置くべき問題であるから自分には人が告げないのであろうと中将は思った。
源氏物語:44 匂宮 (新字新仮名) / 紫式部(著)
和尚は勝手を知つただけに、先きへ入つて暗闇くらがりのなかに蝦蟇かへるのやうに胡坐あぐらをかいてゐた。
あは細目ほそめけて、其處そこつて、背後うしろに、つきかげさへとゞかぬ、やままたやま谷々たに/″\を、蜘蛛くもごとひかへた、ほしとゞくろ洞穴ほらあなごとおほいなる暗闇くらがりつばさひろげて、姿すがたほそ障子しやうじ立棧たちざん
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
が唯一人、浦見町の暗闇くらがりを歩いている時に
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
もう流しもとの暗闇くらがり
(新字旧仮名) / 高祖保(著)
小間使はもう真赤まっか、こいつものになると、時次郎は声をひそめ、「内証で相談がある。まあ、ちょいとちょいと。」かるる袖を払わんとはせで、「御串戯ごじょうだんを。」と口の内、夢路を辿たどりて小蔭の暗闇くらがり
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が唯一人、浦見町の暗闇くらがりを歩いてる時に
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)