斯程かほど)” の例文
吟味ぎんみせしに殘金十一兩りたり是を思へば文右衛門盜賊たうぞくでなき事は明白めいはくなり斯程かほどに證據ある上は汝何程陳ずる共せんなき事ぞいたき思ひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今度は相撲の稽古を思ひ立ち師匠には大錦卯一郎君おおにしきういちらうくんを見立てた。何も素人の痩つぽちをいぢくつて貰ふのに斯程かほどの大力士を煩はさんでもよいのである。
相撲の稽古 (新字旧仮名) / 岡本一平(著)
殊に私達が目の當りに黒岩山を見ると、斯程かほどに幾日も其の山の爲にかなければならなかつた事が不思議に思へた。
黒岩山を探る (旧字旧仮名) / 沼井鉄太郎(著)
斯程かほど大力だいりきある亥太郎、なか/\一人や二人の力で腕を捩上げるなどという事の出来るものではござりません。
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そうして又、同時に、これ程の純な気持ちを持った親子が、斯程かほどまで残虐な、異常な運命に飜弄されているのを見た事も、今日迄六十余年の生涯を通じてなかったのである。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
斯程かほど解らぬ無形の意を只一の感動(インスピレーション)に由って感得し、之に唱歌といえる形を付して尋常の人にも容易に感得し得らるるようになせしは、是れ美術の功なり。
小説総論 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
斯程かほどに御願い申上げても、よしあし共に仰せられぬは、お情無い。私共を何となれとの御思召か、又かのしなを何となさりょう御思召か。何の御役に立ちましょうものでもござりますまいに。」
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
斯程かほどしまだから、なに食物しよくもつこともあるまいと四方よも見渡みわたすと、はたして二三ちやうへだゝつた小高こだかをか中腹なかばに、一帶いつたい椰子やし、バナヽのはやしがあつて、甘美うるはしき果實くわじつえだ垂折しをれんばかりに成熟せいじゆくしてる。
飯島は斯程かほどまでに孝助を愛する事ゆえ、孝助も主人のめには死んでもよいと思い込んで居りました。
御退おしりぞけ下さるべしと言るゝに伊豆守殿顏色がんしよくかへ是れ越前其方は役柄やくがらをも相勤あひつとめ候へば斯程かほどの事はわきまへ居るべし老中らうぢうの公用人は目付代めつけかはりなり役屋敷やくやしきに於て密談みつだん致す事は元より御法度ごはつとなりと申さるゝを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ぬすみ取り無證據なりとて文右衞門に塗付ぬりつけんとたくみしに相違あるまじ不屆至極ふとゞきしごくの奴なり汝は一年何程給金きふきんを取て居るや其金ぬすまざれば何方いづかたより出したる金子なるや明らかに白状せよ斯程かほどに證據のある事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)