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故國
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ここく
三ヶ
月ほどの
南北支那の
旅を
終つて、
明日はいよいよ
懷しい
故國への
船路に
就かうといふ
前の
晩
大佐の
心では、
吾等兩人が
意外の
椿事の
爲めに、
此樣な
孤島へ
漂着して、
之から
或年月の
間、
飛ぶに
羽なき
籠の
鳥、
空しく
故國の
空をば
眺めて
暮すやうな
運命になつたのをば
あの
日の
出づる
邊、
我故國では
今頃は
定めて、
都大路の
繁華なる
處より、
深山の
奧の
杣の
伏屋に
到るまで、
家々戸々に
日の
丸の
國旗を
飜して、
御國の
榮を
祝つて
居る
事であらう。