なぞ)” の例文
……一体いつたいが、天上界てんじやうかい遊山船ゆさんぶねなぞらへて、丹精たんせいめました細工さいくにござるで、御斉眉おかしづきなかから天人てんにんのやうな上﨟じやうらう御一方おひとかた、とのぞんだげな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
小「わが身不肖にして本懐を遂げずとも、しん豫讓よじょうの故事になぞらえ、この頭巾を突き破るは実父のあだ大野の首を掻き取る心思い知れや、大野惣兵衞」
謝肉祭の仮装になぞらえた幾多の小曲から成ったものであるが、その中にはシューマンの主張と矜持きんじと、洒落しゃれと道楽気と、淡い恋と友情とがかくされており
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
小説家はこの若い娘が、内々ない/\自分をスコツトのいた山国のお姫様になぞらへてゐるらしいのを見て取つた。
あなたは、誰かへ書いて与えた詩に、亀山城の北にある愛宕山あたごやまを、周山しゅうざんなぞらえ、御自身を周の武王に比し、信長公をいん紂王ちゅうおうとなしたようなことはありませぬか
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一見しては別に仔細しさいもないようであるが、高時が団十郎の似顔にかかれてあるのは勿論、それをひき廻している天狗どもが、すべて求古会員になぞらえてあるというのであった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
下総の亭南ていなみ、今の岡田の国生くにふ村あたりが都になる訳で、今の葛飾かつしかの柳橋か否か疑はしいが檥橋ふなばしといふところを京の山崎になぞらへ、相馬の大井津、今の大井村を京の大津に比し
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
松茸、椎茸、とび茸、おぼろ編笠、名の知れぬ、きのこども。笠の形を、見物は、心のままになぞらえ候え。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
低音部の不気味な強奏フォルテ、それは冥途よみじの鐘の音になぞらえたものでしょう。
死の舞踏 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
と申したように、観世音かんぜおんにあこがるる心を、古歌になぞらえたものであったかも分りませぬ。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)