“撼(うご)” の例文
踔厲風発(たくれいふうはつ)、説き来り説き去って、拍手喝采四壁を撼(うご)かす時、傍聴席上の一老僧はソーッとハンケチをポケットから引出して目に押当てた。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
我こそと己惚(うぬぼれ)の鼻を撼(うご)めかして煩さく嬢様の許(もと)へやつて来たのは斯(か)ういふ連中だ子。どれも之も及第しさうもない若殿原だ。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
激戦、及びその前後に相ついで起こりし異常の事と異常の感は、風雨のごとくその心を簸(ふる)い撼(うご)かしつ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
淋(さび)しい内(うち)にも春(はる)らしい空氣(くうき)が凡(すべ)ての物(もの)を撼(うご)かした。日(ひ)はまだ南(みなみ)を低(ひく)く渡(わた)りながら暖(あたゝ)かい光(ひかり)を投(な)げる。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
まして不学凡才の身を以て運命を論じたり、運命を測知しようとするが如きは、蜉蝣といふ虫が大きな樹を撼(うご)かさうとするに類したもので、甚だ詰らぬことであります。
運命は切り開くもの (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
道也先生は予言者のごとく凜(りん)として壇上に立っている。吹きまくる木枯(こがらし)は屋(おく)を撼(うご)かして去る。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
待ち設(もう)けても今更人の心魂を駭(おどろ)かす大砲の音が、家をも我等の全身をも揺(ゆ)り撼(うご)かして響いた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
危(あぶ)ないと車掌が絶叫したのも遅(おそ)し早し、上りの電車が運悪く地を撼(うご)かしてやってきたので、たちまちその黒い大きい一塊物は、あなやという間に、三、四間ずるずると引(ひ)き摺(ず)られて
少女病 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「優艶天地を撼(うご)かす」といふ語少(ち)と変な語なれども、その意を察するに優美なる事をいふならん。支那の語にて優美なる詩が天地を撼かすとはいふまじと思へど、それも言葉咎(とが)めに類すれば言はず。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
社会を撼(うご)かすは決して一個人の力にのみ依頼すべからず。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
この山を揺り撼(うご)かして
此山(このやま)を揺(ゆ)り撼(うご)かして
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「人を屠(ほふ)りて餓(う)えたる犬を救え」と雲の裡(うち)より叫ぶ声が、逆(さか)しまに日本海を撼(うご)かして満洲の果まで響き渡った時、日人と露人ははっと応(こた)えて百里に余る一大屠場(とじょう)を朔北(さくほく)の野(や)に開いた。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女はその雑誌に時々所感を寄する信州(しんしゅう)の一男子の文章を読んで、其熱烈な意気は彼女の心を撼(うご)かした。其男子は良人の友達の一人で、稀に信州から良人を訪ねて来ることがあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
毒々しい黒煙りが長い渦(うず)を七巻(ななまき)まいて、むくりと空を突く途端(とたん)に、碌さんの踏む足の底が、地震のように撼(うご)いたと思った。あとは、山鳴りが比較的静まった。すると地面の下の方で
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)