指揮さしず)” の例文
ぜんの朋輩が二人、小野という例の友達が一人——これはことに朝から詰めかけて、部屋の装飾かざりや、今夜の料理の指揮さしずなどしてくれた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
桝組ますぐみ椽配たるきわりもおれがする日には我の勝手、どこからどこまで一寸たりとも人の指揮さしずは決して受けぬ、善いも悪いも一人で背負しょって立つ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その中にやさしき顔のかの烏帽子かぶれるはたきをば、国麿の引取りて、背後うしろかたに居て、片手を尻下りに結びたる帯にはさみて、鷹揚おうよう指揮さしずするなり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
我等儀主家しゅか滅亡の後八ヶ年の間同類を集め、豪家又は大寺へ強盗に押入り、数多あまたの金銀を奪い、実に悪いという悪い事はすべて我等が指揮さしずして是迄悪行をかさねしが
「母様の指揮さしずだろう、一々。私はこうして懇意にしているからは、君の性質は知ってるんだ。君は惚れたんだろう。一も二もなく妙ちゃんを見染みそめたんだ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今我が自然親方の情に甘えてそれになるのはどうあっても小恥かしゅうてなりきれぬわ、いっそのことに親方の指揮さしずのとおりこれを削れあれをき割れと使わるるなら嬉しけれど
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
指揮さしずと働きを亭主が一所で、鉄瓶がゼロのあとで、水指みずさしが空になり、湯沸ゆわかし俯向うつむけになって、なお足らず。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
眼の前ではわが指揮さしずに従い働くようなれど、蔭では勝手に怠惰なまけるやらそしるやらさんざんに茶にしていて、表面うわべこそつくろえ誰一人真実仕事をよくしょうという意気組持ってしてくるるものはないわ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「それ目潰めつぶし。」とお丹の指揮さしず手空てあきの奴等、一足先に駈出かけいだして、派出所の前にずらりと並び、臆面おくめんもなく一斉に尾籠びろうの振舞、さはせぬ奴は背後うしろより手をたたきて
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
亭主のすきな赤烏帽子あかえぼし指揮さしずする処へ、つくだ煮を装分もりわけた小皿てしおに添えて、女中が銚子を運んで来た。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……まだの暗いうちに山道をずんずん上って、案内者の指揮さしずの場所で、かすみを張っておとりを揚げると、夜明け前、霧のしらじらに、向うの尾上おのえを、ぱっとこちらの山のへ渡る鶫の群れが
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
嘲笑あざわらって、車夫に指揮さしずして、一軒店を開けさして、少時しばらく休んで、支度が出来ると、帰りは船だから車は不残のこらず帰す事にして、さておおいなる花束の糸を解いて、縦に石段に投げかけた七人の裾袂
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
水先案内もあるだろう、医者もあろう、船のく処は誰が知ってる、私だ、目が見えないでも勝手な処へ指揮さしずをしてやる、おい、星一ツない暗がりでも燈明台なんぞあてにするには及ばんから。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
指揮さしずは受けねえ。」と肩を揺って、のっさり通る。
浮舟 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
赤熊は指揮さしずする体に頤でしゃくって
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と半ば舞台に指揮さしずをする。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)