かた)” の例文
旧字:
紅き石竹せきちくや紫の桔梗ききょう一荷いっかかたげて売に来る、花売はなうりおやじの笠ののき旭日あさひの光かがやきて、乾きもあえぬ花の露あざやかに見らるるも嬉し。
銀座の朝 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
笑やアがって……あれまア肥料桶こいたごかたげ出しやアがった、たごをかたせ、アヽ桶をおろして挨拶しているが……あゝ兼だ新田しんでんの兼だ、御厄介ごやっけいになった男だからなア
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かの人々の弐千余円を失ひて馳違はせちがふ中を、梅提げて通るはが子、猟銃かたげ行くは誰が子、と車をおなじうするは誰が子、啣楊枝くはへようじして好ききぬ着たるは誰が子、あるひは二頭だちの馬車をる者
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さいぜんはしりたるものども戸板といたむしろなどかたげる用意をなしきたり、つまがもちたるくびをもなきからにそへてかたげければ、人々前後ぜんごにつきそひ、つま子らはなく々あとにつきてかへりけるとぞ。
なれども、しかしそんな小さな事に非常に注意するにかかわらず、人の小僧を夜中かたげて往ってからして破戒はかいな事を行うて平気で居るというその真意が分らない。朦昧もうまいといってよいか馬鹿といってよいか。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
汝らのうち一人その袋をかたげていて来るなら往こうと言う。
と、その儘刀をかたげて一散に逃げ出したさうだ。