抵抗てむかひ)” の例文
ふるへるやうな冷い風に吹かれて、寒威さむさ抵抗てむかひする力が全身に満ちあふれると同時に、丑松はまた精神こゝろ内部なかの方でもすこし勇気を回復した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
どうかすると声が引きぎられ、押し流されようとするのを、さうはさせまいと抵抗てむかひする、その張り切つた気持を楽しむもののやうに、一段と声を強めて
独楽園 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
捕虜は少しの抵抗てむかひもせずに、まるで自分の家へでも入るやうに落ちつき払つて村長の後ろにしたがつた。「カルポー、納屋をあけい!」と村長は村役人に言つた。
なに旦那だんなだ。捕虜ほりよへ、奴隷どれいべ、弱者じやくしやあざけれ。ゆめか、うつゝか、わからん、おれとて貴様達きさまたち抵抗てむかひするちからはない。残念ざんねんだが、貴様きさまむかふと手足てあししびれる、こしたん。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たゞさへ病弱な身、まして疲れた後——思ふに、何の抵抗てむかひも出来なかつたらしい。血は雪の上を流れて居た。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
抵抗てむかひらずはだかにされて、懷中くわいちうものまで剥取はぎとられたうへ親船おやぶね端舟はしけも、をので、ばら/\にくだかれて、帆綱ほづな帆柱ほばしらはなれたくぎは、可忌いまはし禁厭まじなひ可恐おそろし呪詛のろひように、みんなられてしまつたんです。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
丁度其中には、例の種牛もとぼがほに交つて居た。見れば角は紅く血に染つた。驚きもし、あきれもして、来合せた人々と一緒になつて取押へたが、其時はもう疲れて居たせゐか、別に抵抗てむかひも為なかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)