打見うちみ)” の例文
一人二人代ってから出て来たのは、打見うちみは特色のない中年の男でしたが、何か少し話してから居ずまいを直して、うたい出しました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
打見うちみに何の仔細しさいはなきが、物怖ものおじしたらしい叔母のさまを、たかだか例の毛虫だろう、と笑いながら言う顔を、なさけらしくじっと見て
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
与助は村の医師の独り息子で、ことし十六の筈であるが、打見うちみはようよう十一二くらいにしか見えない、ほとんど不具かたわに近い発育不全の少年であった。
探偵夜話 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
打見うちみには二十七八に見えるけた所があるけれど、實際は漸々二十三だと云ふ事で、髭が一本も無く、烈しい氣象が眼に輝いて、少年らしい活氣の溢れた
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
打見うちみところ年齢とし二十歳余はたちあまり、かお丸顔まるがおほうで、緻致きりょうはさしてよいともわれませぬが、何所どことなく品位ひんいそなわり、ゆきなす富士額ふしびたいにくっきりとまゆずみえがかれてります。
打見うちみれば面目めんもくさはやかに、稍傲ややおごれる色有れどさかしくはあらず、しかも今陶々然として酒興を発し、春の日長の野辺のべ辿たどるらんやうに、西筋の横町をこの大路にきたらんとす。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
故人こじんがよみつる歌の事などさま/″\胸に迫りて、ほと/\涙もこぼれつべく、ゆかしさのいとへがたければ、ねやの戸おして大空を打見うちみあぐるに、月には横雲少しかゝりて
すゞろごと (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
壻に擬せられている番頭某と五百となら、はたから見ても好配偶である。五百は二十九歳であるが、打見うちみには二十四、五にしか見えなかった。それに抽斎はもう四十歳に満ちている。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
打見うちみたところ、小作りで華奢きゃしゃで、そんな凄いところなどは少しもありません。
呪の金剛石 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
打見うちみには子供らしい美和子だったが、その笑い方と云い、言葉と云い、涙ぐんで、ゴタゴタ云っている美沢や姉を憫笑びんしょうし、しらじらしく眺めているというような、底知れない大胆さが含まれていた。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
それにしても、この男の美しさももう三十近い筈ですが、打見うちみたところは二十一二、相変らず水もれそうで、こんな悪魔的な事をやり乍らも、少しも人に憎まれない不思議な魅力があります。
百唇の譜 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
とからからと笑った、つつしみ深そうな打見うちみよりは気の軽い。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
呵々から/\と笑つた、慎深つゝしみふかさうな打見うちみよりはかるい。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)