憎々にく/\)” の例文
「この人はね、わざと、わめいたのよ。」アボットが、憎々にく/\しげに云ひ放つた。
と、素晴しい憎々にく/\顔を私の鼻先へ突きつけ、続いて赤鬼の五郎助が
武者窓日記 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
船頭せんどう憎々にく/\しさうに、武士ぶし後姿うしろすがた見詰みつめながら、ふねした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
驚かすばかりなり扨主税之助は入側いりがは右の方に着座ちやくざなし引續きて附添の小普請こぶしん組頭末座に親類石原文右衞門山内三右衞門縁側えんがはには家來けらい安間平左衞門罷出其有樣ありさまいと憎々にく/\しき面魂ひにて一くせあるべき者と言ねど面にあらはれつゝ吟味を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
横顏よこがほ憎々にく/\しい覗込のぞきこんで
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此家このやうち一人ひとりもなし老婆ばあさまも眉毛まゆげよまれるなと憎々にく/\しくはなつて見返みかへりもせずそれは御尤ごもつとも御立腹ごりつぷくながられまでのことつゆばかりもわたくしりてのことはなしおにくしみはさることなれど申譯まをしわけ一通ひととほりおあそばしてむかしとほりに思召おぼしめしてよと詫入わびいことばきもへずなんといふぞ父親てゝおやつみれは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「手前の中学時代の教科書に何んなフリ仮名がついてゐたかは知らないが、俺の斯んなにも厚い、大きな——」と私は手真似して「コリンスといふヒストリアン・デイクシヨナリイには、ちやあんとKがサイレントになつてゐるんだア。」とほき出すと一処に物凄い憎々にく/\顔を
歌へる日まで (新字旧仮名) / 牧野信一(著)