感銘かんめい)” の例文
次郎が、その日感銘かんめいをうけた大河の言葉は、一つや二つではなかったが、とりわけ心に深くしみたのは、つぎの言葉だった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
私は、それまでにも又それから以後にも、彼女の身の上話は、切れ切れに、度々たびたび耳にしたのであったが、この時程感銘かんめい深くそれを聞いたことはない。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私がどんな風に、今の講義を感じたか、それを知りたいという様子でしたから、私は五六秒つぶっていかにも感銘かんめいにたえないということを示しました。
茨海小学校 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
わたしはその都度つど、「先生せんせい威徳ゐとく廣大くわうだい先生せんせい威徳ゐとく廣大くわうだい。」ととなへて、金色夜叉こんじきやしや愛讀者あいどくしや感銘かんめいした。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
諸先生方が小生のためにこの盛大せいだいなる送別会をお開き下さったのは、まことに感銘かんめいの至りにえぬ次第で——ことにただ今は校長、教頭その他諸君の送別の辞を頂戴ちょうだいして
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そして滝川一益の臣から一益の言伝てを聞き取り、また母里もり太兵衛や栗山善助などの姫路の直臣から、主人を救出するまでの経緯いきさつをつぶさに聞いて、ふかい感銘かんめいとともに
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
原始的な風景というより風景の純粋じゅんすいさといった感銘かんめいがふかく、ながく心に残っています。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
それは、ねこの生涯しょうがいにとっても、またどんなに感銘かんめいふかいことだったかしれません。
どこかに生きながら (新字新仮名) / 小川未明(著)
ことに啓吉は、その女が死後の嗜みとして、男用の股引ももひき穿いているのを見た時に悲劇の第五幕目を見たような、深い感銘かんめいを受けずにはいなかった。それは明かに覚悟かくごの自殺であった。
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
何かしらこの文句の中に頑是がんぜない幼童ようどうの心を感銘かんめいさせるものがあったに違いない。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
では何が僕の評価を決定するかと云へば感銘かんめいの深さとでも云ふほかはない。
小説の読者 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
初演の夜、聴衆は敵意に燃えて、非難と嘲笑ちょうしょう妨害ぼうがいのうちに劇は進んだが、聴衆はいつの間にやら不思議な感銘かんめいに引き入れられて、次第に静粛せいしゅくになるのをどうすることも出来なかったのである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
あふれ動く感銘かんめいなやましい
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
なお、わかれぎわに、村長が朝倉先生に私語した言葉は、それをはたできいていた塾生たちに、異常な感銘かんめいあたえたらしかった。村長は言った。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
いかにも沈黙ちんもく行者ぎょうじゃといった感銘かんめいをかれにあたえていたので、口をきるのがよけいにためらわれるのだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)