悪企わるだく)” の例文
旧字:惡企
おどかして名刺を見せましたけど、刑事とも何とも書いて無いんですの。偽刑事が人をわなおとしいれようと云う悪企わるだくみなんですわ……
偽刑事 (新字新仮名) / 川田功(著)
浪五郎は仲間の者の悪企わるだくみから、五年前に海賊の一味と間違えられて縛られ、もう少しで首を切られるところを、縄抜けをして助かった人です。
「見さつしやれ、牧師のやうに温和おとなしくしてまさ。」と、その温和しいのを自慢に、成るべく高く売りつけよう為めに発明した怖ろしい悪企わるだくみなのだ。
どうして食つたと云ふのですか? それはたぬき悪企わるだくみです。婆さんを殺した古狸ふるだぬきはその婆さんにけた上狸の肉を食はせる代りに婆さんの肉を食はせたのです。
教訓談 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「こうして休んではいられない。一刻も早く追い付いて紋十郎めの悪企わるだくみを右衛門さんに話さねばならぬ」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
謂わば未曾有みぞう悪企わるだくみを考えつくに至った一つの重大な動機は、M県の菰田の地方では、一般に火葬というものがなく、殊に菰田家の様な上流階級では、猶更なおさらそれをんで
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
せっかくの悪企わるだくみも水のあわになり定めし其奴そやつは案に相違していることでござりましょうほんにわたくしは不仕合わせどころかこの上もなく仕合わせでござります卑怯ひきょうな奴のうらき鼻を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
暗誦あんしょう、定期的な半休や、散歩、運動場での喧嘩けんかや、遊戯や、悪企わるだくみ、——こんな事がらが、長いあいだ忘れられていた心の妖術ようじゅつによって、あまたの感覚、かずかずの豊富な出来事
わし種々いろ/\申すに申されやせん間違まちげえが有って、国のいえが潰れかゝりやんしたから、つれえのを忍んで居りましたが、母や女房が心得違こころえちげえの者で、わしをマア殺すべいとまでに悪企わるだくみをされやしたから
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
余吾之介様を独りじめにしたいばかりの私の悪企わるだくみ、今日は余所よそながら処刑を見物する積りで、竹矢来の外から悪魔外道の眼を光らせていた浅ましい私でございます。
十字架観音 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「こんな抜け穴をこしらえた所を見ると、賊は非常に大げさな悪企わるだくみをしていたのかも知れませんね。折角せっかくの隠れ家がバレてしまって、彼奴さぞかしくやしがっている事でしょう」
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
だいそれたお前の悪企わるだくみ! 人の噂で聞きました。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「小三郎の脇差で久兵衛を殺し、一と通り洗って自分の行李こうりへ入れて置いたのも行届いた悪企わるだくみだ。あれを見た時は俺も下手人はてっきり小三郎に違いないと思ったよ」
僕は君の悪企わるだくみにほとほと感心して了ったよ。よくもあんな空事そらごとを考え出したもんだね。
灰神楽 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
源次が殺されるまでは、どうかしたら真物ほんものの駆落かと思ったが、お前の話を聴いているうちに、俺にはどうも恐ろしい悪企わるだくみの匂いがして来たよ。悪事を知った源次を殺して口を
これ程巨細こさいに知る為には、小山田家の召使を買収するか、彼自身が邸内に忍込んで、静子の身近く身をひそめているか、又はそれに近い悪企わるだくみが行われていたと考える外はなかった。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
今こそ丈五郎の悪企わるだくみが分った。彼は最初から私をなきものにする積りだったのだ。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「お前は伝六を怨んだ。そして成瀬屋一家の者を怨んだ。お前の父親をむずかしい公事くじ(訴訟)に引入れて没落させ、首を縊るような目に逢わせたのは、伝六と総右衛門の悪企わるだくみだと知っていた——」
たとい私の相手が他の婦人であったにしても、許すべからざる計画です。彼はまあ、どういう気で、こんなひどい悪企わるだくみを目論もくろんだのでありましょう。それにまた、春子さんも春子さんです。
覆面の舞踏者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「——近ごろ本所元町の越前屋半兵衛のところに、いろいろ不思議な事が起って不気味でかなわない。いずれは悪人の悪企わるだくみではあろうが、お二人のお嬢様に万一のことがあってはいけないからお知らせする——」