忍足しのびあし)” の例文
僕は最中にも食いきて、本を見ていると、梯子はしご忍足しのびあしで上って来るものがある。猟銃の音を聞き慣れた鳥は、猟人かりゅうどを近くは寄せない。
ヰタ・セクスアリス (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そこでそっと床から抜け出して、朝の着物に着替えて階段のところへ、忍足しのびあしをして出て見た。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
れでゐて足音あしおとしづかで、ある樣子やうす注意深ちゆういぶか忍足しのびあしのやうである。せま廊下らうかひと出遇であふと、みちけて立留たちどまり、『失敬しつけい』と、さもふとこゑひさうだが、ほそいテノルで挨拶あいさつする。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
山刀やまがたなして片手に鉄砲をげ、忍足しのびあしで来て破れ障子に手を掛けまして、そうっと明けて永禪和尚とお梅の居ります所の部屋へ参って、これから掛合かけあいに成りますところ、一寸一息つきまして。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
このていが、稀代に人間というものは、激しい中にも、のんきな事を思います。同じ何でも、これが、もしふもとだと、頬被ほおかぶりをして、つぶてをトンと合図をする、カタカタと……忍足しのびあしの飛石づたいで………
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ああどうしよう、せっかくの望も喜も春の雪と消え失せてしまった。ああこのままここを辞せねばならぬのか。彼の胸には失望と苦痛とが沸き立った。仕方なく彼はきびすを返して忍足しのびあしでここを退さがった。
愛か (新字新仮名) / 李光洙(著)
これや時鐘とけい忍足しのびあし
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
それでいて足音あしおとしずかで、ある様子ようす注意深ちゅういぶか忍足しのびあしのようである。せま廊下ろうかひと出遇であうと、まずみちけて立留たちどまり、『失敬しっけい』と、さもふとこえいそうだが、ほそいテノルでそう挨拶あいさつする。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
これや時鐘とけい忍足しのびあし
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)