もど)” の例文
省吾は少許すこし顔をあかくして、やがて自分の席へもどつた。参観人は互に顔を見合せ乍ら、意味の無い微笑ほゝゑみ交換とりかはして居たのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
阿那律その妻子の歎くをあわれみ、その者を尋ねて悔過せしめ、男子となりもどって家内に遇わしめた(『経律異相』十三)。
その上肝心の本人は帰って来ても籍はもどらなかった。いくら実家で丹精して育て上たにしたところで、いざという時に、またれて行かれればそれまでであった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
汚点しみだらけの防水幕に仕切られた楽屋の片隅を、檻の中の熊のように、往きつもどりつしていた。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
楯をも貫くべき雨の打付ぶつかり来る度撓む姿、木の軋る音、もど姿さま、又撓む姿、軋る音、今にも傾覆くつがへらんず様子に、あれ/\危し仕様は無きか、傾覆られては大事なり、止むる術も無き事か
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ひどい夏痩せの千登世は秋風が立つてからもなか/\肉付が元にもどらなかつた。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
何処どこの扉も鎖したるに狼狽うろたふるを、車掌に強曳しよぴかれてやうや安堵あんどせるも無く、青洟垂あをばなたらせる女の子を率ゐて、五十あまり老夫おやぢのこれも戸惑とまどひしてきつもどりつせし揚句あげく、駅夫にひかれて室内に押入れられ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
炬火たいまつの焔、沈として、平安はもどり來りぬ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
一八一四年頃牧師コインビャーがふと買い入れた書籍の表紙をかの書の古紙で作りあるを見出し、解きもどして見ると損じうしなわれた頁も少なくなかったが
木のきしる音、もど姿さま、また撓む姿、軋る音、今にも傾覆くつがえらんず様子に、あれあれ危し仕様はなきか、傾覆られては大事なり、止むるすべもなきことか、雨さえ加わり来たりし上周囲まわりに樹木もあらざれば
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しかる後彼女はそれを元通りの順で、元通りの位置にもどした。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と三吉は正太の前にもどって言った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)