御逗留ごとうりゅう)” の例文
とにかく、ゆっくり御逗留ごとうりゅうでしたら、遊びにおいで下さい、梨木平なしのきだいらというのを通って無名沼ななしぬまへ出ると、その沼のほとりにわたしの小屋が見えます。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
吾家うちの佐吉に風呂ふろでもかせますに、もう一日御逗留ごとうりゅうなすってください。年寄りの言うことをきいてください。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
忠勝が堺を出たのは、まだ真っ暗な早暁そうぎょうであったから——以後の主君の動静はわからない。が、恐らくは今日もまだ、堺に御逗留ごとうりゅうではないかと想像されていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これはこれは、河岸の檀那、御機嫌宜ごきげんよろしゅう、こちらに御逗留ごとうりゅうでございますか。どうぞ初日には御見物を。」相撲を迎えに出た土地の人達は、皆驚いて目をみはった。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
ましてや准備よういおろかなる都の客様なんぞ命おしくば御逗留ごとうりゅうなされと朴訥ぼくとつは仁に近き親切。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
貴方あなた御逗留ごとうりゅうというのに元気づいて、血気な村の若い者が、三人五人、夜食の惣菜ものの持寄り、一升徳利なんぞ提げて、お話対手あいて夜伽よとぎはまだおだやかな内、やがて、刃物切物、鉄砲持参
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「また源義経公川上白矢ガ嶽にて五月節句をお祝あそばされそれより御下りこれあり村国庄司内にて三四十日被御逗留ごとうりゅう宮滝柴橋御覧有りその時御詠およみの歌に」として二首の和歌がっている。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
貴殿あなたは、どこか、このあたりのお寺に御逗留ごとうりゅうになっておりますか」
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
長い御逗留ごとうりゅうで。
女の一生 (新字新仮名) / 森本薫(著)
「なんにしても、よくよくの御事情とお察し申します、そういうわけでしたならば、こちらは閑静でよろしうございますから、ゆっくり御逗留ごとうりゅうなさいませ」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これは攘夷じょうい御祈願のため、神武帝じんむてい御山陵ならびに春日社かすがしゃへ御参拝のためで、しばらく御逗留ごとうりゅう、御親征の軍議もあらせられた上で、さらに伊勢神宮へ行幸のことに承った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「なんの、御逗留ごとうりゅうなら、御遠慮はない。しかし、なお誰が参る約束を召されたのか」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「春秋の潮時でもござりましょうか。——大島屋の大きいおかみが、半月と、一月、ずッと御逗留ごとうりゅうの事も毎度ありましたが、その御逗留中というと、小一の、持病の坐睡がまた激しく起ります。」
怨霊借用 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お気が向いたら、ぜひ、お出かけ下さい、拙者宅に幾日でも御逗留ごとうりゅうくだされて、幾枚でもお描き下さい」
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「だいぶごゆっくりでございますな。今日は御逗留ごとうりゅうのおつもりでいらっしゃいますか。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
柔和やわらかなちっとも気取きどりっけのない四十ぐらいな——後で聞くと主人だそうで——質素な男が出迎えて、揉手もみでをしながら、御逗留ごとうりゅうか、それともちょっと御入浴で、といた時、客が、一晩お世話に
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ヘエ。そんなに大勢で、よほど長く御逗留ごとうりゅうになるのですか」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう少し御逗留ごとうりゅうになりますと、その川狩りの壮観をごらんに入れるのでございますが、今日はあいにくお役人の検分で……二三日しますと、上手かみてから流れて来た巨大なる材木が
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
お一方御逗留ごとうりゅう、おさみしそうなその方にも、いまの立山が聞かせたいと、何となくそのお一方が、もっての外気になるようで、妙に眉のあたりを暗くしましたっけ、じっと日のかげる山をながめたが
唄立山心中一曲 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ではその頃、京都に御逗留ごとうりゅうでございましたか」
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その女の方は、やはり、手前共に暫く御逗留ごとうりゅうをなさいました。胆吹山からおいでになりましたそうでございます。なおよく承りますると、胆吹の山に住む女豪傑の大将だそうでございます。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「武蔵様には当家に御逗留ごとうりゅうでございましょうか」
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時に、どちらに御逗留ごとうりゅう
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
少し間が過ぎて、おれに言うには、太夫方も御覧の通り大勢様の御逗留ごとうりゅうゆえ、なかなか手廻り申さぬ故、あまり軽少だがこれを御持参下さるようとて一貫文くれた。それをもらって早々逃げ出した。
「もう永く、こちらに御逗留ごとうりゅうですか」
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
御逗留ごとうりゅうでございますか……」
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「こちらに御逗留ごとうりゅうか」
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)