待遠まちどお)” の例文
男「おおきに待遠まちどおだったろうな、もっと早く出ようと心得たが、何分なにぶん出入でいり多人数たにんずで、奉公人の手前もあって出る事は出来なかった」
「お待遠まちどお様。やっとお料理が出来ました。御酒ごしゅは何に致しましょうか。老酒ラオチュ、アブサン、サンパンぐらいに致しましょうか」
超人鬚野博士 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
太夫たゆう、お待遠まちどおさまでござんしょうが、どうかこちらへおいでなすって、おちゃでも召上めしあがって、おちなすっておくんなまし」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それが待遠まちどおえぬとすれば、やはりこういう多少のゆかりある雑談を試みて、ちょっとでも今日の希望をこまやかならしめるのが、よいかと思う。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
(弟の手を握りて、互に目を見交す。○間。)こんな事をいってぐずぐずしていてはおっ母さんが待遠まちどおに思うでしょう。
なにしろ客が立て込んでいるので、女中が時どきにお待遠まちどおさまの挨拶をして行くだけで、注文の料理はなかなか運ばれてない。記者は酒を飲まない。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
夜具の中から首を出していると、日暮れが待遠まちどおでたまりません。仕方がないから頭からもぐり込んで、眼をねむって待って見ましたが、やはり駄目です。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いざ背負しょおうと、後向うしろむきになって、手を出して待っているが、娘は中々なかなか被負おぶさらないので、彼は待遠まちどおくなったから
テレパシー (新字新仮名) / 水野葉舟(著)
つかれひどいから、しんは少しぼんやりして来た、何しろ夜の白むのが待遠まちどおでならぬ。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして、こちらの計画がうまく奏効そうこうするだろうか。実に待遠まちどおしい、ドキドキする三時間でした。もう振向こうか、もう振向こうかと、辛抱しんぼうがし切れなくなって、幾度いくど頸を廻しかけたか知れません。
目羅博士の不思議な犯罪 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もし旦那さん誠にねえお待遠まちどおだろうが、少しねえ荷イおろしてかなければなんねえ、貴方あんたおりて下さい、おりて何もねえが麦湯むぎゆがあるからゆっくりと休んで
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
侍女一 早くお着きあそばせばうございます。わたくしどももお待遠まちどおに存じ上げます。
海神別荘 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いろいろの好い食べ物を持ってくるのが待遠まちどおだというふうに歌われている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
大「いや、どうも無理に酒をしいられ、神原も中々の酒家のみかで、飲まんというのをかずに勧めるには実に困ったが、飯もべずに帰って来たが、さぞ待遠まちどおであったろう」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
(それはお待遠まちどおでござんした。)
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
助七は待遠まちどおでなりませんが、長二が急いではいけないと申した口上がありますから、下手に催促をしたら腹を立つだろうと我慢をして待って居りますと、七月目なゝつきめ漸々よう/\出来上って
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「お待遠まちどおさまでごぜえます。」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
重「長い間待遠まちどおで有ったろう」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ああ、待遠まちどおな、多一さん、」
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お待遠まちどおだんべいや。」
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)