トップ
>
平衡
>
へいこう
ふりがな文庫
“
平衡
(
へいこう
)” の例文
平衡
(
へいこう
)
を保つために、すわやと前に飛び出した
左足
(
さそく
)
が、
仕損
(
しそん
)
じの
埋
(
う
)
め
合
(
あわ
)
せをすると共に、余の腰は具合よく
方
(
ほう
)
三尺ほどな岩の上に
卸
(
お
)
りた。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
これも全身の姿勢に軽微な
平衡
(
へいこう
)
破却
(
はきゃく
)
が必要であったのと同じ理由から理解できる。眼については、
流眄
(
りゅうべん
)
が媚態の普通の表現である。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
むしろその拡大を
惧
(
おそ
)
れている。と云って正面衝突も極力避けたい。ひそかに
希
(
ねが
)
うところは、源家と平家の勢力が
平衡
(
へいこう
)
してくれる事にある。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
これを調節抑制して、社会生活の
平衡
(
へいこう
)
を保ち得るものは、その人の教養——わけてもたしなみと打算と、想像力だけであるといっても良い。
随筆銭形平次:17 捕物小説というもの
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
次郎が、これまで外に求めていたものを内に求めるようになるために、甚しく心の
平衡
(
へいこう
)
を失ったのは、むしろ当然だったといわなければはるまい。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
▼ もっと見る
彼女はそこで
貪
(
むさぼ
)
るように、あの煙草を喫ったのだった。喫っているうちに、次第に薬の
効目
(
ききめ
)
はあらわれた、彼女は
平衡
(
へいこう
)
な心を取りかえしたのだった。
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あまり異常な幸福が近づいたために、心がその喜びをにないきれなくなって、
平衡
(
へいこう
)
を失ってしまったのではないか。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
ソレニ、コレハ多分半分以上神経ノ
所業
(
しわざ
)
ダト思ウケレドモ、トキドキ体ガ急ニフラフラトシテ
平衡
(
へいこう
)
ヲ失イ、右カ左カ、ドチラカヘ倒レソウニナルヿガアル。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そして二つの説得力が妙な
平衡
(
へいこう
)
状態を保っている、つまりそのどちらにも、最後の説得力が欠けているのだ。
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
目をとろんとさせて、巻たばこをふるえる指にはさんだまま、からくも
平衡
(
へいこう
)
をたもちながら、酔いのために前後へひっぱられて、ひとつところをよろよろしているのである。
ヴェニスに死す
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
たこが
傾斜
(
けいしゃ
)
せず、頭をふらず、つねに
平衡
(
へいこう
)
をたもっているからである、糸は最後のひとまき三百六十メートルがのびた、地面をぬくことまさに二百数十メートルの高さである
少年連盟
(新字新仮名)
/
佐藤紅緑
(著)
自然界の
平衡状態
(
イクイリプリアム
)
は
試験管内
(
しけんかんない
)
の
科学的
(
かがくてき
)
平衡
(
へいこう
)
のような
簡単
(
かんたん
)
なものではない。ただ一種の小動物だけでも、その
影響
(
えいきょう
)
の
及
(
およ
)
ぶところははかり知られぬ
無辺
(
むへん
)
の
幅員
(
ふくいん
)
をもっているであろう。
蛆の効用
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
同じ芸術に従事して生活の思想にも形式にも類似の多いという事が二人の心の
平衡
(
へいこう
)
を保って行かれる一つの原因であろう。また子供に対する愛情を斉しくしていることも一つの原因であろう。
私の貞操観
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「いき」の質料因たる二元性としての媚態は、姿体の一元的
平衡
(
へいこう
)
を破ることによって、異性へ向う能動性および異性を迎うる受動性を表現する。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
僕は、あやうく身体の
平衡
(
へいこう
)
を失ってすってんころりんとするところを、タクマ少年が
敏捷
(
びんしょう
)
に腕をつかんで引揚げてくれたので、
醜態
(
しゅうたい
)
をさらさないですんだ。
海底都市
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
心の
平衡
(
へいこう
)
はとれていない。何者かと問えば、何者か? と、同じように
動揺
(
どよ
)
めき惑うばかりだった。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
天然
(
てんねん
)
の
設計
(
せっけい
)
による
平衡
(
へいこう
)
を
乱
(
みだ
)
す前には、よほどよく考えてかからないと
危険
(
きけん
)
なものである。
蛆の効用
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
元来は
静
(
せい
)
であるべき
大地
(
だいち
)
の一角に
陥欠
(
かんけつ
)
が起って、全体が思わず動いたが、動くは本来の性に
背
(
そむ
)
くと悟って、
力
(
つと
)
めて
往昔
(
むかし
)
の姿にもどろうとしたのを、
平衡
(
へいこう
)
を失った機勢に制せられて
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
わしはあなたを
責
(
せ
)
める気は少しもない。あなたはあまりに痛ましい。
困苦寂寥
(
こんくせきりょう
)
の
歳月
(
さいげつ
)
があなたの
忍耐
(
にんたい
)
力を奪ってしまったのだ。あなたは心の
平衡
(
へいこう
)
を支える勇気を
砕
(
くだ
)
かれてしまったのだ。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
以上は田辺氏の説であるが、要するに旋律上の「いき」は、音階の理想体の一元的
平衡
(
へいこう
)
を打破して、変位の形で二元性を
措定
(
そてい
)
することに存する。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
身体の
平衡
(
へいこう
)
をとりもどすひまもない。一同は、はずみのついたボールのように、もんどりうってくらがりの
闇
(
やみ
)
の中へ叩きつけられたが、幸いにもそこは身体にやわらかくあたった。
時計屋敷の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
能登はやっと、相手の気位に
平衡
(
へいこう
)
をとり得た気がして、眼をもって、ぐっと迫った。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
覚悟をした大尉の戦闘機は、何の苦もなく
平衡
(
へいこう
)
をとりかえし、何事も無かった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
平
常用漢字
小3
部首:⼲
5画
衡
常用漢字
中学
部首:⾏
16画
“平衡”で始まる語句
平衡器官
平衡状態
平衡則
平衡圏
平衡点