崩壊ほうかい)” の例文
旧字:崩壞
“ワシントン、一夜のうちに崩壊ほうかいす——白堊館最初に犠牲ぎせいとなる。危機一髪、ル大統領、身を以てのがれる。崩壊事件の真相全く不明”
この際、呉がかねての条約にもとづいて、魏の一面を撃つならば、魏はたちまち両面的崩壊ほうかいを来し、中原の事はたちまちに定まる。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
どうかした拍子におりを破った猛獣の大群のように、自然があばれ出して高楼を倒壊せしめ堤防を崩壊ほうかいさせて人命を危うくし財産を滅ぼす。
天災と国防 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
だれがわれわれのような境遇にあって自暴やけにならないでいられよう。わしはわしの心が砂のように崩壊ほうかいするのを防ぐために必死の力をつくしている。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
壁のやわらかいところには、木材の支柱しちゅうをほどこして崩壊ほうかいをふせぎ、年長者はつるはしをふるい、年少者は岩くずや石きれを運んでは、洞の外にすてた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
私の完全な犯行をタッタ今まで保証して、支持して来てくれた一切のものが、私の背後で突然ガランガランガランガランと崩壊ほうかいして行く音を聞いたように思った。
冗談に殺す (新字新仮名) / 夢野久作(著)
みんな話し合いの上だったと気がついたのだが、彼は自分の事業の崩壊ほうかいすることを何より恐れ、彼等の言い分を悉く入れたが、なに、今しばらくの辛抱だと思った。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
つまりロシア社会史の推移の上から見ると、あたかも地主貴族文化がようやく崩壊ほうかいし始めた時期に、彼は最も大切な精神の形成期を、ほかならぬ貴族の子弟として迎えたことになります。
「はつ恋」解説 (新字新仮名) / 神西清(著)
神社仏閣は、次から次へとわれらのまのあたり崩壊ほうかいして来たが、ただ一つの祭壇、すなわちその上で至高の神へ香をく「おのれ」という祭壇は永遠に保存せられている。われらの神は偉いものだ。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
それが崩壊ほうかいもとだよ。この世で形あるもので滅しないものって何一つあるか。あるとすれば、形の無きものでなければならない。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぐっと踏んだ鉛の靴の下がぐらぐらと崩壊ほうかいするように感じたときは、かならず足もとから、まっくろなものがとび出す。それは深海魚しんかいぎょであった。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なんだか独立な自分というものは微塵みじん崩壊ほうかいしてしまって、ただ無数の過去の精霊が五体の細胞と血球の中にうごめいているという事になりそうであった。
自画像 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
長浜の町は、かなえの沸くような騒ぎだった。すでにここは木之本、賤ヶ嶽にも近く、今暁以来、前線の崩壊ほうかい恟々きょうきょうとしていたところだった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時計屋敷の崩壊ほうかいを前にして、大時計はますますおちついた調子で、こッつ、こッつと、時をきざんでいく。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしてしかも、斎藤家の領地は尺土もえはせず、かえって、隣国に虚をうかがわれ、それが動機となって、さしもの御城地も崩壊ほうかいに瀕するであろう
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まちがいなく一分後に、時計屋敷は大爆発し、天にふきあがり、崩壊ほうかいし去った。
時計屋敷の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
天下一統の大業を完成して、後漢の代を興した光武帝から、今は二百余年を経、宮府の内外にはまた、ようやく腐爛ふらん崩壊ほうかいちょうがあらわれてきた。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すぐる日の大爆発でなかば崩壊ほうかいし、それにつづいてあやしい機械人間のさわぎでもって、この研究所はいよいよ気味のわるい危険なものあつかいされ、村人たちもだれ一人ここには近づかず
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
七、八百年も前から祖先代々住み古している柳生城の石垣なども、至るところ崩壊ほうかいして、土の肌をむき出していた。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「動くと、これをつかうぞ。すると、金属はとろとろとけて崩壊ほうかいする」
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
訥々とつとつと、痛心を吐く言葉には、どこか迫るものがあって、同じように、主家の崩壊ほうかいに立っている藤左衛門は、敵の民とはいえ、惻々そくそくと、情に於て、共に
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自爆した矢倉の崩壊ほうかいと共に、全城また火の海となったので、寄手の勢は、いったんその火勢から、囲みを開いた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「大事——未然に洩れては、すべての崩壊ほうかいだ。この城、この国、一朝にして、資本もとも子もくすことになる」
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いま貴国の強兵を以て魏を攻めらるれば、魏は必ず崩壊ほうかいきざすであろう。わが蜀軍が不断に彼を打ち叩いて、疲弊ひへいに導きつつあるは申すまでもありません」
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、その恩賞の金よりも、彼には、露悪的な興味があり、この念仏門という大きな勢力の崩壊ほうかいを、他人の火事のようにかたわらから見る楽しみのほうが大きかった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
亡ぶものは亡ぶ素因そいんを多分に持って、当然な崩壊ほうかいの一瞬に来るのであるが、その瞬間には、自他共に
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
徳島城の出丸櫓でまるやぐらは、もうあらかた工事ができている。今は、いつか崩壊ほうかいした石垣の修築が少し残っているばかり、元気のいいのみの音は、そこで火を出しているひびきである。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
敵国の崩壊ほうかいは、当然、味方の大捷たいしょうをここにもたらすものだったが、それを歓ぶ前に、敵とはいえ、余りな醜さ、余りな卑劣に、武門人道のうえから、信長は持ち前の感情を激発して
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もしその謀略が成らんか、魏はいかに大国なりとも、内部から崩壊ほうかいせずにいられない。
三国志:11 五丈原の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
徽宗の終り、北宋ほくそう崩壊ほうかいなどは、ここでは、まだまだ二十五年も後のことである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この需要力がどこにあって、何処へ物と人とが吸引されてゆくか見当もつかなかった。だが、とにかく、一藩の崩壊ほうかいを中心として急激に経済方面の変動も起って来たことは争えないことだった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
特に、後白河法皇のおわす院と、平相国へいしょうこく清盛が一門平氏の上にあった。けれど、やがて崩壊ほうかいをきたす危殆きたいの素因も、また、華やかなる栄花的謳歌の門と、到底、両立し難い院と平家の間にあった。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
などと、早くも呉の全面的崩壊ほうかいを口にいう者すらあった。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)