山津浪やまつなみ)” の例文
雑草の中の水溜みずたまりにはとが降りて何かをあさり歩いているのが、いかにものんびりした光景で、此処ここばかりはそんな山津浪やまつなみ痕跡こんせきなどは何処どこにもない。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
關東大地震かんとうだいぢしんのときおこつた根府川ねぶがは山津浪やまつなみは、その雪崩なだくださいみぎのような現象げんしようあるひ小規模しようきぼおこつたかもれない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
うけたる者も今は見放みはな寄付よりつかず身近き親類なければ何語らんも病の親と私しと二人なれば今迄いままで御定宿の方々も遂にわきへ皆取られ只一人も客はなし其上去々年をととし山津浪やまつなみあれたる上に荒果あれはて宿やどかる人も猶猶なく親子の者の命のつな絶果たえはてる身の是非もなく宿のはづれに旅人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
六、 海岸かいがんおいては津浪襲來つなみしゆうらい常習地じようしゆうち警戒けいかいし、山間さんかんおいては崖崩がけくづれ、山津浪やまつなみかんする注意ちゆういおこたらざること。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
六甲の山奥からあふれ出した山津浪やまつなみなので、真っ白な波頭を立てた怒濤どとう飛沫ひまつを上げながら後から後からと押し寄せて来つつあって、あたかも全体が沸々と煮えくり返る湯のように見える。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
關東大地震かんとうだいぢしん場合ばあひおいては、各所かくしよ山津浪やまつなみおこつたが、其中そのうち根府川ねぶがは一村いつそんさらつたものがもつと有名ゆうめいであつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
なおもう一つさかのぼると、阪神間には大体六七十年目毎に山津浪やまつなみの起る記録があり、今年がその年に当っていると云うことを、既に春頃に予言した老人があって、板倉はそれを聞き込んでいた。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
渓流の水嵩みずかさが増したために山津浪やまつなみがありはしないかと村の人々が騒いでいるような朝のことで、雨の音よりもすさまじい流れの音が耳をろうするように聞え、時々川床の石と石とつかるたびに、どどん
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)