ちり)” の例文
皮肉を云はれながらも、所天をつとがいつに無く多少のうち解けを見せるのが、千代子には嬉しかつたらしい、で、ながちりをしてゐたので
泡鳴五部作:01 発展 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
ちりの身体付の何処となく暖かく重いような具合やら、これに対すると何となく芸者らしくない濃厚と自由の気味合を感じるのが
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
かたくびよりたかそびえて、ぞく引傾ひきかたがりと代物しろものあをぶくれのはらおほいなるうりごとしで、一尺いつしやくあまりのたなちりあまつさびつこ奈何いかん
鑑定 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
巫戯化ふざけるな。そう急にあ行かねえよ。第一ながちりするきっかけがもうなくなっているんだ。もうぽちぽち帰りかけているとこだ。築地の芳月軒に女が待っているからな。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ぽとんとなみだが落ちた。その涙でかすんだ目に、小さいときから子守りばかりさせたためか、出っちりになってしまった幼いコトエのかわいそうな姿が浮かんできて消えなかった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「何しろ、早い仕事をしなくッちゃ、この甲府にも長ッちりはしていられない」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
隅「私ゃアね富さんじゃないかと思って、内々ない/\見世でう/\いう人じゃアないかというとうだというから、早く来度きたいと思うけれども、長ッちりのお客でねえ、今やっとけて来たの、本当に能く来たね」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
うわさかな、恐しく手間が取れた、いや、何しろ三挺頂いて帰りましょう。薄気味は悪いけれど、名にし負う捨どんがお使者でさ、しかも身替みがわりを立てるうち奥の一間で長ッちりと来ていらあ。
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
げッちりになるのを、城太郎は手をのばして、そのえりもとをつかみよせ
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)