小松菜こまつな)” の例文
むつかしやの隠居は小松菜こまつなの中から俎板まないたのにおいをかぎ出してつけ物のさらを拒絶する。一びん百円の香水でもとにかく売れて行くのである。
試験管 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
農家らしい古家ふるいえでは今でも生垣いけがきをめぐらした平地に、小松菜こまつなねぎをつくっている。また方形の広い池を穿うがっているのは養魚を業としているものであろう。
元八まん (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ささやかな菜園にわずかに小松菜こまつなを摘んで朝々の味噌汁の仕度したくをする。そんな生活の様子がまざまざと思い出される。菜園にはまだ雪が消え残っていたのである。
一人はかならず手傳てつだはするとふてくだされ、さてさて御苦勞ごくらう蝋燭代ろうそくだいなどをりて、やれいそがしやれぞひま身躰からだ片身かたみかりたきもの、おみね小松菜こまつなはゆでゝいたか、かずあらつたか
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一軒の小さな八百屋やおやがあって、あかる瓦斯ガスの燃えた下に、大根、人参にんじんねぎ小蕪こかぶ慈姑くわい牛蒡ごぼうがしら小松菜こまつな独活うど蓮根れんこん、里芋、林檎りんご、蜜柑の類がうずたかく店に積み上げてある。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
大地が始終真白まっしろになって居るではなし、少し日あたりのよい風よけのある所では、寒中かんちゅうにも小松菜こまつな青々あおあおして、がけの蔭ではすみれ蒲公英たんぽぽが二月に咲いたりするのを見るのは、珍らしくない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
小松菜こまつな 九二・六二 二・五一 〇・五二 一・一八 一・七九 一・三八
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)