小村こむら)” の例文
さうして養蠶やうさんせはしい四ぐわつすゑか五ぐわつはじめまでに、それを悉皆すつかりかねへて、また富士ふじ北影きたかげ燒石やけいしばかりころがつてゐる小村こむらかへつてくのださうである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
十歳とおばかりの頃なりけん、加賀国石川ごおり松任まっとうの駅より、畦路あぜみちを半町ばかり小村こむら入込いりこみたる片辺かたほとりに、里寺あり、寺号は覚えず、摩耶夫人おわします。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
水田すいでんのかぎりなく広い、耕地こうちの奥に、ちょぼちょぼと青い小さなひと村。二十五六戸の農家が、雑木ぞうきの森の中にほどよく安配あんばいされて、いかにもつつましげな静かな小村こむらである。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
是から行ったって泊めるとこもねえ小村こむらだから、水街道へ行かなけりゃア泊る旅籠屋はたごやはねえ、まアいやナ、江戸子えどっこなれば懐かしいや、己も本郷菊坂生れで、無懶やくざでぐずッかして居るが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こゝに又和歌山の城下じやうかより五十町みち一里半ほどざいに平澤村といふ小村こむらあり此處へ先年せんねん信州者にて夫婦にむすめ一人ひとりつれし千ヶまゐりの平左衞門と申者來りぬ名主なぬし甚兵衞は至て世話好せわずきにて遂に此三人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
小村こむらのこのことばに放浪者はちょっと眼をぱちくりさせた。
流転 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
経営していたカンタブリアという小村こむらであって
物凄き人喰い花の怪 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
志摩しまのはて安乘あのり小村こむら
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
寂寞じゃくまく古今ここんの春をつらぬいて、花をいとえば足を着くるに地なき小村こむらに、婆さんは幾年いくねんの昔からじゃらん、じゃらんを数え尽くして、今日こんにち白頭はくとうに至ったのだろう。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仮令たとえ小村こむらでも村方を離れて知らぬ他国へ参りますものは快くないもので、ことには年を取りました惣右衞門の未亡人びぼうじんが、十歳になる惣吉という子供の手を曳いて敵討かたきうちの旅立でありますから
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
志摩しまはて安乘あのり小村こむら
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)