寂寞じやくまく)” の例文
いつまでも変らずにある真鍮しんちゆうの香炉、花立、燈明皿——そんな性命いのちの無い道具まで、何となく斯う寂寞じやくまく瞑想めいさうに耽つて居るやうで
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
やがてその寂寞じやくまくたるあたりをふるはせて、「ろおれんぞ」の上に高く手をかざしながら、伴天連の御経をせられる声が、おごそかに悲しく耳にはいつた。
奉教人の死 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
寂寞じやくまく罌粟花けしを散らすやしきりなり。人の記念にたいしては、永劫にあたひすると否とを問ふ事なし」といふ句がいた。先生は安心して柔術の学士と談話をつゞける。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
山と水と寂寞として地に横はり、星と月と寂寞じやくまくとして天にかゝれり。うるはしのはみかな。願はくは月よ傾かざれ、星よ沈まざれ、永久とはの夜の、この世の聲色せいしよくおほひつゝめよかし。
清見寺の鐘声 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
甲板デツキ片隅かたすみ寂寞じやくまくとして、死灰しくわいごと趺坐ふざせり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
この深い寂寞じやくまくの境にあんな雪崩なだれをまき起して
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
こひ』は華厳けごん寂寞じやくまくに蒸し照る空気うちあふる。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
紫摩黄金しまわうごん良夜あたらよは、寂寞じやくまくとしてまたいう
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
寂寞じやくまくただこひもとむ。(ヱルレエヌ)
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
無爲寂寞じやくまくの國にひとり立つをおぼ
寂寞じやくまくや、『昨日きのふ』はきぬ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
寂寞じやくまくとひと日暮れゆく
朝菜集 (旧字旧仮名) / 三好達治(著)
寂寞じやくまく五百重いほへのなかに
寂寞 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
坂のぼりゆく寂寞じやくまく
小曲二十篇 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
嵐を友としていさごに臥して龍顏のおんいきざしを守り、聊もそむき奉らじとふるまはれしに、寂寞じやくまくの風に心を破られて、草を枕としては松のひとりにならんとするを悲み
山家ものがたり (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
不動ふどうの姿ゆめ重く、寂寞じやくまくとして眠りたり。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
寂寞じやくまくとした空中の歓喜をさけぶ
智恵子抄 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
寂寞じやくまく大光明だいくわうみやう、にあへぐ時。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
寂寞じやくまくや、これをたとへば
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
鈍色にびいろ寂寞じやくまく
寂寞 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
不動の姿夢重く、寂寞じやくまくとして眠りたり。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
宏大無辺天空の寂寞じやくまく遠く
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
寂寞じやくまくの、あはれ、晶玉しやうぎよく
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
紫摩黄金しまおうごん良夜あたらよは、寂寞じやくまくとしてまた幽に
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
寂寞じやくまくの關のとざしは
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
寂寞じやくまくかか猪木舟ちよきぶね
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
日のかぐろひの寂寞じやくまく
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
寂寞じやくまくの胸の日南ひなた
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
日のかぐろひの寂寞じやくまく
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)