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宵月
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よひづき
緑いよ/\
濃かにして、
夏木立深き
處、
山幽に
里靜に、
然も
今を
盛の
女、
白百合の
花、
其の
膚の
蜜を
洗へば、
清水に
髮の
丈長く、
眞珠の
流雫して、
小鮎の
簪、
宵月の
影を
走る。
身に付ゐたるが天神丸の巖石に
打付られし
機會に
遙の岩の上へ打上られ
暫は
正氣も有ざりける
稍時過て心付
拂と一
息吐夢の覺し如く
然にても船は如何せしやと
幽かに
照す
宵月の光りに
透し見ば廿人の者共は如何にせしや一人も
影だになし
無漸や
鯨魚の
餌食と成しか其か中にても
我獨辛も
命助かりしは